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寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年11月3日(水)号~「ただ話を聴く」ことの難しさと意義~

水曜ラジオ

【聴いた番組】

『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』 #24 元受刑者飯〈後編〉

『#むかいの喋り方』(CBCラジオ

高田文夫ラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送) 11月1日放送回

『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送

『24時のハコ』(TBSラジオ) ストレッチーズ

『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』はシーズン1の最終回。作り手は大変だと思うが、これはぜひ続けて言ってもらいたい良質な番組だ。このシーズン1を通じて、本音と向きあう音声メディアとの相性も抜群だということも証明された。

元受刑者が語る「居場所」という言葉が強く響く。「居場所がない」という感覚と、「自分の話を聴いてくれる人がいない」という状況。その二つが人間にとっていかに大切かということを、それらに常に恵まれてきた人は、ほとんどわかっていないのかもしれない。この二つが合わさると、完璧な「孤独」が生まれてしまう。

そして犯罪を犯すと、その状況はさらに強まってゆく。特に印象的だったのは、取り調べも裁判も、向こう側の質問に対して答えることを求められるだけで、こちらから話すことを聴いてくれる人は誰もいないという話。

そもそも裁判官や弁護士は、基本的には整った教育環境を必要とする以上、恵まれてきた人間である可能性が高い。罪を犯した人間の孤独に寄り添う感性を、そしてそのことの必要性を、本当に感じている人がどれだけいるだろうか。

彼は「解決策を提示してくれ」と言っているのではなく、ただ「話を聴いてほしい」と言っている。それくらい誰にでもできることのようにも思えるが、偏見のないフラットな姿勢でそれをできる人間が、いかに少ないことか。

この番組はまさにそんなフラットなスタンスを信念として持っているように思えて、シーズンの締めくくりにその核の部分を改めて感じることができた。続編を強く望む。