寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年10月12日(火)号~コンビ間の健全な衝突~
【聴いた番組】
『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』 #21 私立探偵飯〈前編〉
『トータルテンボスのぬきさしならナイト! Season 2』(ニッポン放送 Podcast Station)
『蛙亭のトノサマラジオ』(ニッポン放送 Podcast Station)
今週の『カーボーイ』は定期的に訪れる、太田が田中に激しくダメ出しをする回。しかしこれが相変わらず面白い。ネタを作る側と作らない側の考えかたと立場の違いが、自然と浮き彫りになる。それぞれの考えている層の違いが見える。
ハライチの岩井も、澤部のことを「ネタ受け取り師」と定義していたが、爆笑問題の場合も片方がネタ作りにほぼタッチしていないという意味で、構図は似ている。
だが見ている観客はどうなのかといえば、やはりネタを受け取る側にいるという意味では作っていないほうに属するわけで、そういう意味では中途半端にネタ作りに関わっているよりも、なるべく関わっていないほうが観客の目線に立てるという利点もある。
作り手の細部へのこだわりがどこまで観客に伝わるのかという、どのジャンルにも共通する普遍的な問題。そういった細部の積み重ねが作品に厚みを持たせると同時に、そういうのは全部関係ない、とこだわりを捨てることも時には必要で、そう言ってくれる人こそが作り手にとって貴重な存在であったりもする。
しかし太田が言うように、「お前が考えている程度のことは、すでに俺は全部考えた上で結論を出している」という気持ちもよくわかる。議論の段階が合致していないということに、自分は気づいているが相手は気づいていないという感覚。自分が長い時間かけて考えてきたごく初期段階で没にしたアイデアを、いまさら妙案であるように提示されたときに出る溜息。
それでもこの二人のラジオを聴いていると、こうして意見をぶつけあえる関係がどんなに健全かと気づかされる。ましてやその意見の衝突が、結果的に笑いを生み出しているとなれば。