テレビに耳ありラジオに目あり

テレビ/ラジオを自由気ままに楽しむためのレビュー・感想おもちゃ箱、あるいは思考遊戯場

2022年4月期春ドラマ序盤レビュー

春ドラマ開始前に書いたこちらの記事への、アンサーというか説明責任というかとりあえずの答えあわせというか。今期の各ドラマに関する寸評を書いてみたい。

ちなみに今回は特に、予想も期待も大きくはずれている。脚本家を信頼しすぎたせいかもしれない。

radiotv.hatenablog.com

とりあえず現在の視聴状況に合わせて、【視聴継続中】【HDD蓄積中】【挫折】の三段階評価(?)をつけてみた。【HDD蓄積中】に関しては、録画がどんどん溜まっていって、この先続きを観るかもしれないし、観ないままやがて消してしまうかもしれないし、という状態。


【月曜日】
◆『元彼の遺言状』(フジテレビ/月曜21時/綾瀬はるか主演)【HDD蓄積中】
意味深な遺言状の謎をばら撒くだけばら撒きまくった初回。それを最終話にかけてじっくり解明していくのかと思いきや、その展開は2話目であっさりお開き。3話目からは普通の地味な「町弁」ものになってしまった。

前クールの『ミステリと言う勿れ』で味を占めたのか、初速を高めるために序盤に大きな展開を持って来ておいて、あとは地味な話をマイペースにやるという竜頭蛇尾な手法。

序盤にいったん摑んでしまえば、視聴者は惰性で観続けてくれるだろうという甘えは明らか。いわば吉野屋作戦。


◆『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ/月曜22時/広瀬アリス主演)【視聴継続中】
古典的な少女漫画的設定で、正直なところ主役の恋愛自体にそこまで物語を牽引する力は感じないが、「男女六人計三組による三者三様の恋愛」という合わせ技で見続けている感じ。

特に意味ありげな藤木直人の正体は気になるところ。


【火曜日】
◆『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS/火曜22時/上野樹里主演)【視聴継続中】
ここも主役というよりは、父親の松重豊井川遥の恋愛のほうが気になる。

主人公の恋愛に関しては、いつどこで恋愛感情にスイッチが入ったのかがわかりづらく、視聴者の感情がやや置いてけぼりを喰らう印象。

親子が互いの恋愛をどうサポートしあっていくのか(時に邪魔になったりもしながら)というのが、今後の見どころかもしれない。


【水曜日】
◆『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ/水曜22時/今田美桜主演)【挫折】
30年前のリメイク作ということで、古さを懸念していたがやはり古かった。設定はアップデートしていても、やはりキャラクターが古い。

脳天気な主人公に悩みがなさすぎて、ついていけず2話目で挫折。トラブルに遭遇しても苦悩しないので、物語の中心にあるべき葛藤というものが存在しない。この人はわざわざ見守っていなくとも、放っておけばどこでも誰とでも上手くやっていくだろう、という気になってしまった。


◆『ナンバMG5』(フジテレビ/水曜22時/間宮祥太朗主演)【視聴継続中】
ヤンキーものはむしろ苦手な部類だが、細部まで気が利いていて面白く、コメディとしてよくできている。個人的には、今期イチの掘り出しもの。

配役も見事にハマッており、ストーリーも喜怒哀楽全方位に充実している。

二話目の放送延期でやや躓いた感はあるが、このクオリティは信頼に値するだろう。


【木曜日】
◆『未来への10カウント』(テレビ朝日/木曜22時/木村拓哉主演)【視聴継続中】
オーソドックスな学園ドラマであり、やや強引な展開も見られるが、木村拓哉の存在感でねじ伏せられてしまう。特に今回は、プレイヤーではなくコーチという一歩引いたスタンスであるからこそ、その存在が全体の中で際立って見える。

彼のドラマが始まるたびに、「いつものキムタク」と揶揄する声も聞かれるが、それは物事をあまりに大雑把に捉えすぎなのではないかと思う。黙ってそこに居るだけでもモテてしまう「あの日のキムタク」の姿は、ここにはない。

もちろん、最終的に主役にもっとも美味しいところが還元される構造になっているのは、どんな作品でも当然の話で、でなければその人を主役とは呼ばない。

脇を固める満島ひかり生瀬勝久のコメディ的な間の良さも存分に発揮されており、笑える会話も多い。滝沢カレンの演技が自然なのにも驚いた。今期1、2を争う楽しみなドラマになっている。


◆『やんごとなき一族』(フジテレビ/木曜22時/土屋太鳳主演)【視聴継続中】
極端ではあるがベタなシンデレラストーリーではあり、感情移入が難しいかと思ったが、意外と楽しみながら観ている。

それは設定的に悪役の分量が多く、かつそれぞれが遠慮なく嫌な奴として描かれているからで、とにかく主役が正しいと思うことさえ貫けば、どこと当たっても自ずから爽快な逆転劇が生じる構図になっている。


【金曜日】
◆『インビジブル』(TBS/金曜22時/高橋一生主演)【HDD蓄積中】
観続けるべきか悩んでいる。

どうも柴咲コウの役どころに、リアリティを感じられないというのが大きい。裏社会を牛耳る「犯罪コーディネーター」として一目置かれている存在には、どうにも見えないからだ。

その危険かつ微妙な立場を貫くには、とんでもない人望、才能、スキル、経歴、非情さ等が必要であるに違いない。それらを含めての、圧倒的威圧感が求められる。

あえてそういうものを感じさせないのが、逆に非凡さを感じさせるという漫画的なキャラクター造形なのだろう。だが命がけで本能的に生きている人たちを前に、そんなひねりは通用しないだろうと思ってしまう。

人は追い込まれれば追い込まれるほど、古典的な基準で人を判断するものだから。


◆『家政婦のミタゾノ5』(テレビ朝日/金曜23時15分/松岡昌宏主演)【視聴継続中】
大好きな作品なのだが、シーズン5ともなると、さすがにネタ切れ感は否めない。

既視感のある展開が多く、観ていて意外性を感じづらくなってきているのは間違いない。少年漫画であれば、強力なライバルキャラでも登場させたいところ。

まだ期待を捨てきれないので、観続けるつもりではあるが……。


【土曜日】
◆『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ/土曜22時00分/ディーン・フジオカ主演)【挫折】
「科学捜査」という部分を打ち出したいのはわかるが、そこに頼りすぎて、肝心の人間ドラマの部分がおろそかになっている印象。

不思議な事件が起きているはずなのに、その裏にある人間たちの心の動きが単純化されすぎているので、いまいち興味を惹かれなかった。


◆『クロステイル〜探偵教室〜』(フジテレビ系列/土曜23時40分/鈴鹿央士主演)【挫折】
脚本家に期待しすぎたかもしれない。イチ推し予想したにもかかわらず、2話目で早々に挫折(気持ち的には1話目の最中にはすでに)。

思いのほかちゃんとした探偵術を学ぶ内容で、ミステリ的な緊張感も、コメディ要素も乏しい。

東海テレビ枠は、やはり当たりはずれが激しい。


【日曜日】
◆『マイファミリー』(TBS/日曜21時00分/二宮和也主演)【視聴継続中】
解決策にかなり強引な部分も多々あるが、物語の緊張感は持続している。「考察」を誘発するような、いまっぽい作りのドラマである。

とはいえ、『真犯人フラグ』などに比べると、考察すべき要素はさほど多くはないので、それだけを期待するとやや淡泊に感じるかもしれない。そのぶんは日曜劇場らしい、人間ドラマの部分で補っていくことになるのだろう。

とりあえず今期で一番、先が気になるドラマではある。


◆『金田一少年の事件簿』(日本テレビ/日曜22時30分/道枝駿佑主演)【挫折】
アニメでやっていたころはそこそこ観ていたが、こうして学園ドラマとしての部分を強調されると、やはり人が多数死んでいるにもかかわらず、彼らが平然と学校に通えていることに違和感を感じてしまい、1話目で挫折。

2022年4月期春ドラマの傾向と対策

自分が何を観るのかを探る指針にもなるので、久々にドラマ総ざらえ的なエントリを。といっても一部クオリティの怪しい深夜ドラマや、あまり興味の持てないものは挙げていない。

それにしたってある種の「傾向」は見えるかもしれないが、いったい何を「対策」するというのか。「対策」というよりは「事前の構え」というか「心の準備」というかなんというか。ただなんとなく「傾向」と言えば「対策」と続けたくなる受験脳。

ちなみに、ここで面白いと予想したものが全然つまらなかったり、つまらないと予想したものが案外面白かったりということもよくある。じゃあ役に立たないじゃないか、と言われればそのとおり。どうも預言者にはなれないらしい。

なので僕もそうしているが、どんな作品であれ、とりあえず一話目を観てから判断することをおすすめする。

――なんて書いているうちに大きな地震と停電に見舞われて。先の見えぬ停電から復旧した直後に、こうして続きを書いている。戦争やらコロナやらいろいろあるが、心置きなくドラマが楽しめる日常を願いつつ。


【月曜日】
◆『元彼の遺言状』(フジテレビ/月曜21時/綾瀬はるか主演/4月11日スタート)
www.fujitv.co.jp

それにしても弁護士もの多いな、去年も『イチケイのカラス』やってたし、と思って振り返って見ると、あちらは裁判官でこちらは弁護士。ちなみにキムタクの『HERO』は検事。

とはいえメインとなる舞台は同じく裁判所や事務所であり、設定としては近似値に見える。だとしたら、『HERO』や『リーガル・ハイ』に勝てるかどうか。そういう勝負になってくる。見る側のハードルも自動的に上がる。

原作をつけてまでやるのなら、もう少し見慣れない設定のを引っ張ってきてほしい、というのが正直なところ。

見どころは共演の大泉洋だろうか。それはこの作品に限ったことではないけれど。

全体として、わりと保守的な印象。


◆『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ/月曜22時/広瀬アリス主演/4月18日スタート)
www.ktv.jp

男女6人恋物語、という設定。となるとオーソドックスなラブコメになりそうだが、気になるのは各キャラクターがそれぞれにいまどきの、恋愛に対して消極的なスタンスを取っているっぽいところ。

物語をドラマティックに動かすためには普通、男女どちらかに積極性が必要になるが、そこを欠いた中でどのような展開を見せるのか。

もしそれが可能であれば、ある種奥手と言われる現代ならではの恋愛劇の、新たな雛形になるかもしれない。もちろん消極性が仇となって、全体として地味な印象に終わる可能性もあるだろう。


【火曜日】
◆『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS/火曜22時/上野樹里主演/4月19日スタート)
www.tbs.co.jp

テーマは父娘のダブル婚活。娘役の上野樹里がヨガインストラクターで、父役の松重豊が辞書編纂者というあたり、まずは設定の隅々に至るまでニッチなところを狙っている(狙いすぎている?)印象。

いかにもいまっぽさを狙ったタイトルをつけておきながら、そのあとに「~父と娘の結婚行進曲~」という補足説明をつけてしまっているのは、ちょっと弱気で自信なさげに見える。ここはかなり迷ったはずで、内容を伝えるには必要という意見もわかるが、これをつけ足したことで一気に古い感触に。

そう考えてみると『半沢直樹』って題名はやっぱり凄いなと、改めて思う。何も説明できていないのに、あれだけ多くの人が見たのだから。

同じく吉澤智子が脚本を手掛けた『あなたのことはそれほど』は絶妙に怖くて面白かったが、今回はわりとほのぼのとしてそうに見えるので、あれを期待するわけにもいかないか。父と娘設定という意味では、『パパとなっちゃん』という名作を思い起こさせる部分も。


【水曜日】
◆『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ/水曜22時/今田美桜主演/4月13日スタート)
www.ntv.co.jp

働く女性をターゲットにした日テレ水10枠らしいといえばらしい内容。

しかし前クールの『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』にも通じる安っぽい雰囲気を感じるあたり、ちょっと嫌な予感が…。

30年前にドラマ化された作品のリメイク作とのことで、この30年間における女性を巡る職場環境の変化がどのように反映されているのか、といったあたりも気になるが、はたしてその内容を上手いことアップデートできるのかどうか。

今田美桜の黒髪おかっぱ姿に違和感がありすぎて、すでにギャグ漫画に見えてしまっているのも不安要素…。


◆『ナンバMG5』(フジテレビ/水曜22時/間宮祥太朗主演/4月13日スタート)
www.fujitv.co.jp

今シーズンから増設された「水10ドラマ」枠の第一弾は、脱ヤンキーを目指すヤンキードラマ。明らかに『東京リベンジャーズ』の大ヒットを受けて、という狙いが透けて見えるタイミング。

昨年秋の日テレドラマ『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール』は良質な作品だったが、あれはあくまでも白杖ガールのほうがメインだったから、純粋なヤンキードラマとは言えないかもしれない。

いまや絶滅危惧種とも言える「ヤンキー」という存在が、ちょうどいい距離感で古典的かつファンタジックな魅力を放ちはじめているということなのか、単にそれを題材としたいくつかの作品のクオリティがたまたま高かったというだけなのか。

このへんのドラマまでヒットしてくると、いよいよ本格的なヤンキーブーム到来ということになるのかもしれない。特にそれを望んではいないが。

踊る大捜査線』の本広克行が演出を務めるというのも、ひとつの注目ポイントか。


【木曜日】
◆『未来への10カウント』(テレビ朝日/木曜22時/木村拓哉主演/4月14日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

木村拓哉主演×福田靖脚本という『HERO』のタッグがテレ朝で実現。

となれば当然のように期待は高まるが、肝心のキムタクの役どころが「ボクシング部のコーチ」であり、「学園スポーツドラマ」だと言われてしまうと、その期待はかなり減退する。

これもヤンキーブームの一環なのかなんなのか、どうも熱血ドラマが増えてきているような気がしないでもない。これもコロナの時代の閉塞感を、代わりになんとか打破してほしいという巷間のニーズを感じてのことなのだろうか。


◆『やんごとなき一族』(フジテレビ/木曜22時/土屋太鳳主演/4月14日スタート)
www.fujitv.co.jp

華麗なる一族に嫁いだ一般庶民の奮戦記。いわゆる「格差婚」の最大値というか。

共演の松下洸平は、『最愛』の好演によりいまもっとも脂が乗っている俳優のひとりだろう。

問題はこの現実離れした設定のどこに、視聴者がリアリティを見出せるのかという点。一話目で、その取っ掛かりを見つけられるといいのだが。


【金曜日】
◆『インビジブル』(TBS/金曜22時/高橋一生主演/4月?日スタート)
www.tbs.co.jp

「刑事×犯罪コーディネーター」という構図は、いま深夜に放送されている『ケイ×ヤク―あぶない相棒―』を彷彿とさせるが、あえて天敵とバディを組むというのが、ひとつの流行になってきているのか。

昨今、飽和状態にある刑事ドラマからどう芯をズラして見せるかといった試みが多くおこなわれているが、これもその一貫だろう。たしかに、わかりやすい化学反応の公式ではある。

そこに主演が高橋一生となれば、どうしても『天国と地獄~サイコな2人~』を思い出す。

脚本担当のいずみ吉紘がかつて手掛けたドラマ『クロコーチ』は、原作漫画が存在するとはいえスリリングな作品であったので、サスペンスを生み出すその手腕に期待が高まる。


◆『家政婦のミタゾノ5』(テレビ朝日/金曜23時15分/松岡昌宏主演/4月22日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

個人的に大好きなドラマなので、また帰ってきてくれたことが嬉しい。

とはいえ、前シーズンあたりはさすがにやや失速感もあったので、なにかしら新要素や新展開が欲しいタイミングでもある。そもそも一筋縄ではいかない作品なので、何かやってくれると期待している。

このドラマの魅力に関しては、以前書いたこちらのレビューを是非。

radiotv.hatenablog.com


【土曜日】
◆『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ/土曜22時00分/ディーン・フジオカ主演/4月23日スタート)
www.ntv.co.jp

こちらも「警察官僚×天才科学者」という、刑事ドラマの芯を少しズラした組み合わせ。

いまどき科学捜査は通常の刑事ドラマにも普通に入ってくるので、それ以上の、もう一段階上の科学の使いかたという引き出しがあるのならば、他の刑事ものとの違いを生み出せる可能性はある。

この土曜10時枠自体、かなりはずれが続いている印象があったが、いまやっている『逃亡医F』は意外と面白いので油断は禁物。


◆『クロステイル〜探偵教室〜』(フジテレビ系列/土曜23時40分/鈴鹿央士主演/4月9日スタート)
www.tokai-tv.com

この東海テレビ制作「オトナの土ドラ」枠は毎度当たりはずれが激しいが、チャレンジングであるとも言える。今クールの『おいハンサム!!』が意外にも面白かったので、次もついまた期待してしまう。

しかも今作の脚本は、『半沢直樹』から『家政婦のミタゾノ』まで書き分ける八津弘幸。そのわりには題名が普通っぽすぎるのが気がかりではあるが、なにかしら面白くしてくれるはず。


◆『マイファミリー』(TBS/日曜21時00分/二宮和也主演/4月?日スタート)
www.tbs.co.jp

誘拐事件が軸にあるドラマでありながら、サスペンスでもミステリーでもなく「ファミリーエンターテインメント」だと謳っているのが興味深い。

脚本家は『グランメゾン東京』『危険なビーナス』など、すでにこの日曜劇場枠でも実績充分の黒岩勉。個人的にはむしろサスペンスやミステリーのほうを期待してしまうが、誘拐からどう家族を描き出してくるのかに注目。


◆『金田一少年の事件簿』(日本テレビ/日曜22時30分/道枝駿佑主演/4月24日スタート)
www.ntv.co.jp

どうしてもいまさら感が強いが、すでに漫画やアニメでクオリティは証明されているので、あとはドラマなりの新鮮味をいかに出してくるのか、というくらいか。

とはいえ、わざわざドラマで観なくても、という気がついしてしまうのは否めないが…。


【今期の個人的注目作】

◎『クロステイル〜探偵教室〜』
 八津弘幸のオリジナル脚本に期待。
 

○『インビジブル
 高橋一生とサスペンスの相性の良さ。
 
○『家政婦のミタゾノ5』
 今期は個人的に、どうにも八津弘幸シフト。

△『恋なんて、本気でやってどうするの?』
 ラブコメが稀少な今期。ありがちなラブコメをアップデートできるか。

『M-1グランプリ2021』決勝感想~はたして漫才は学習可能であるのか否か~

f:id:arsenal4:20211220011725j:plain:w500

今年は無名の初出場者が多いとの前評判だったが、蓋を開けてみれば最終決戦に残った三組は、いずれも昨年の決勝経験者。これをどう見るべきか。

M-1』では、初登場時が圧倒的に有利だという定説もあった。何度も出場していたり、テレビへの露出が増えていくうちに、インパクトが弱まってどんどん獲りにくくなっていくという説。今回でいえば、敗者復活から上がってきたハライチが、まさにそういう状況であったかもしれない。

前年の上位陣が退いたところに、その下に甘んじていた層が繰り上がる。これはもっとも順当な図式であるようにも思えるが、漫才という芸事において、そこまで確実に努力が報われるものなのか、どうか。

今大会の最終決戦に残った三組のネタには、いずれも昨年からの成長の跡が見られた。特にオズワルドに関しては、審査員のアドバイスから直接学習したことが得点の向上に直結するという、これまでになくストレートな学習効果があった。

しかし一方で、その三組による最終決戦が、例年に比べてやや爆発力に欠けたのも事実だろう。ラスト、各審査員が口々に「僅差だった」と口にしていたのは、おそらくそれぞれの披露したネタが、一本目よりも弱かったことによる部分が大きいのではないか。

だとすればそんな学習効果にも、「ヒットは学べるが、ホームランは学べない」というような、一種の限界があるようにも思える。

その点、初登場組のホームランに期待していたのだが、残念ながらそこまでには至らなかった。しかしもちろんいくつかの発見はあったし、錦鯉は優勝にふさわしかったと思う。

以下、登場順に個別レビューを。


モグライダー
美川憲一さそり座の女」の歌詞冒頭に現れる「いいえ」という否定形に注目した着眼点に、まず感服。誰もが「言われてみればたしかにそう思う」と感じる、ネタのお題としては実に絶妙なライン。

以降は美川を「いいえ」から救うべく、なんとかして星座名を浴びせまくるがいっこうに正解しないという不毛な展開。基本的に同じところを縦に掘り続けるミニマムなスタイルで、『M-1』用に短時間勝負向きのネタを拵えてきたという印象。

その結果、ともしげの天然ボケという最大の武器を生かし切れていない感もあって、もっと彼のあたふたする様子から、なんらかの奇跡が生まれる瞬間を目撃したかったという気も。

しかし天然に頼るのはあまりにもリスクが大きすぎて、こういう必勝の場では難しいのかもしれない。いずれにしろトップバッターとしては、かなりいい滑り出しだったように思う。今後への可能性も充分に感じさせた。


【ランジャタイ】
審査員も軒並み苦戦している様子だったが、これはたしかに評価が難しい。

強風に煽られて猫が飛んできたり、その猫が耳から体内へ侵入してきたり、さらには体内のコックピットで人間を操縦しはじめたりと、とにかくトリッキーな発想で観衆を振りまわしていく。

その発想自体は面白く、それだけでもう充分であるようにも思えるが、やはりエンターテインメントである以上は、その先には「その面白さをどう伝えるか」という表現力の問題が待っている。

現状では、伝わらない部分をツッコミ等で補うのではなく、伝わらないままに勢いでぶっちぎる、という形になっているが、この先そのスタイルをさらに突き進めるのか、あるいはいくらか受け手に歩み寄るのか。

そのあたりはツッコミのワードセンスや頻度にかかっているように思うが、平場でのオール巨人とのやりとりを見ているうちに、より適切なバランスがそう遠くないうちに見つかるような気が、なぜかした。


【ゆにばーす】
ランジャタイが場を掻きまわした直後というのもあって、漫才スタイルのオーソドックスさがより際立って見えた。どちらかというと、悪い意味で。

M-1』で優勝したら芸人を辞めると公言している川瀬名人の気合いが入りすぎているせいか、ネタをガチガチに仕上げすぎている感があり、面白さよりは窮屈さを感じる瞬間が多かった。

審査員はボケのはらちゃんの技術向上を褒めていたが、個人的にはそれが裏目に出ているように思えた。本来は最大の武器であるはずのはらちゃんのキャラクターが、台詞まわしに汲々としてすっかり自由を失っているように見えた。


【ハライチ(敗者復活枠)】
澤部の意見をすべて頭ごなしに否定しまくる岩井が、同じことを澤部にやられると突如ブチ切れるという最大限のブーメラン。

彼らが発明したいわゆる「ノリボケ漫才」とは異なる新手法を持ってきたのは流石だが、後半やや飽きが来てしまった。

その原因は、ひとつには最初に言い返された時点で岩井がマックスで地団駄を踏んでしまい、以降それをエスカレートさせることができなくなってしまった点。もうひとつは、起承転結でいえば「転」にあたるその逆転劇を、わりと早い段階で披露してしまった点にあるのではないか。

最終決戦に残れないことが判明した際の、岩井のやりきった表情が印象的だった。


真空ジェシカ
「罪人」のことを沖縄風に「つみんちゅ」と呼び、以降も「ジャイロ回転」「二進法」「理系のお婆ちゃん」「ハンドサイン」等々、独特のワードセンスを遺憾なく発揮するその語彙力が、他との明確な違いを生み出していた。

全体としては小ボケの連打になっていて、派手な展開はないため大爆発はなかったが、その打率の高さには注目すべきものがあった。

審査員の講評を聴いていて、みんな語彙力のことを「センス」と呼ぶんだなぁと思った。


【オズワルド】
昨年、彼らの漫才を観た審査員の松本人志オール巨人のあいだで繰り広げられた「ツッコミが声を張り上げるべきか抑えるべきか論争」。

彼らは今年、その両者の意見を見事に取り入れた漫才で、「抑えるべきところは抑え、張り上げるべきところでは張り上げる」という、当たり前のようでなかなかできない適切なバランスを見つけ出してみせたことに、まずは讃辞を贈りたい。

個人的には松本側の、「もっとツッコミは抑えたほうがいい」という意見に同意していたのだが、それはツッコミ自体の問題というよりも、むしろボケの弱さが原因だったのだということに、今年の彼らの漫才を観ていて気がついた。

さほどでもないボケに対して、ツッコミが大きく声を張り上げたならば、それは当然過剰なツッコミと感じられてしまう。それは観覧車程度で悲鳴を挙げているようなもので、それを最適化するためには悲鳴のボリュームを下げるか、あるいは観覧車をジェットコースターにしてしまうか。

そこで彼らは前者ではなく後者の、つまり畠中のボケをよりぶっ飛んだ方向へと強化した結果、全体として声を張り上げるに足るネタに仕上がっていたように見えた。

二本目は、一本目に比べるとやや派手さに欠けたが、文体で勝負するそのスタンスは純文学好きにはとても興味深く、いよいよこれまでの「おぎやはぎフォロワー」という自分の認識を改めるべき段階に来ていると感じた。


ロングコートダディ
「生まれ変わったらワニになりたい」という珍奇な発言から、生まれ変わりのシステムが徐々に明らかになっていく展開が面白い。

ほぼコントといっていい世界観だが、生まれ変わる際のルールが不利なほうへ次々と追加されていくうえ、その中心に「肉うどん」という間の抜けたワードを持ってくるあたりにもセンスを感じた。

途中で「二文字タイム」がもうけられるなど展開上の仕掛けも多く、かなり完成度が高いと感じたが、何かしら派手さが足りなかったのか。


【錦鯉】
昨年のネタは一発ギャグを中心に、なんとか周囲を肉づけしていったようなギクシャクした作りに見えていたが、今年は一発頼みではなく全体をきっちり意識した構成になっていて、明確な成長の跡が感じられた。

ベテランだろうがなんだろうが、成長のタイミングに遅すぎることはない、と証明するように。

以前よりキャラクターの認知度が上がっていることを上手く利用することにより、老けキャラを軸にしたネタはより地に足が着いた感触。

二本目のラスト、人を床に安置する動きによって鮮やかに伏線を回収したところで、優勝は決まったと感じた。


【インディアンス】
小ボケを連打するスピード漫才は相変わらずで、個人的には一撃の浅さゆえに得意なタイプではない。

しかし今回は一本目の「恐怖心のやつ、東京行ったらしいな」という擬人化フレーズを筆頭に、それなりに強いパンチラインもいくつかあって、速度だけでなくややボケの強度が増してきた印象を受けた。

加えて審査員も指摘していたように、ツッコミのきむが支柱としての安定感を醸し出すようになってきたお蔭で、田渕がより思い切ったボケを放り込めるようになってきているという効果も見えた。


【もも】
「転売目的顔」といった「○○顔」という比喩表現の応酬がシンプルに面白く、言葉選びのセンスに間違いないものを感じた。

だが一方では言葉に頼りすぎている感もあって、動きや展開に乏しいためややダイナミックさに欠け、後半少し飽きてきたのは否めない。

とはいえ、その言語感覚が武器として強力であるのは間違いなく、今後も要チェックのコンビであると認識した。


radiotv.hatenablog.com
radiotv.hatenablog.com
radiotv.hatenablog.com
radiotv.hatenablog.com
radiotv.hatenablog.com
radiotv.hatenablog.com
tmykinoue.hatenablog.com
tmykinoue.hatenablog.com
tmykinoue.hatenablog.com