農作物に限らず、ドラマにおいても毎年秋は豊作であり勝負どころだとよく言われる。だがそのプレッシャーが局及び制作陣を数字上の確実性へと向かわせるのか、かつての名作の続編や既出ヒット作のリメイク等に頼るパターンと、国際的なコラボ体制を敷いて周囲からガチガチに固めるという二方面への展開が顕著になっている。
ちなみに前クールのイチオシだった『Tシャツが乾くまで』に関しては、個人的には前半の盛り上げかたが素晴らしかっただけに、後半はその無茶ぶりを上手く回収できず竜頭蛇尾に終わった印象。そもそもまともに回収し得るレベルの伏線ではなかったからこそ、あれだけ中盤まで盛り上げることができたと見るべきかもしれない。ああ見えてロケットスタート型というか。
そうなると今後の生方脚本に関しては、観るほうはその点やや警戒して構える必要があるかもしれない。しかしここまで話題になったとなると、初回に大風呂敷を広げるパターンは今後増えそうではあるが。
なお今回も、基本的にはプライム帯の作品を中心に取り上げ、深夜枠は特に気になったものだけに絞って触れる形に。特に深夜帯に関しては、さすがに粗製濫造がいきすぎていてもはや無限増殖の勢い。
それでは以下、曜日順に。
【月曜日】
◆『救命病棟24時』(フジテレビ/月曜21:00/江口洋介・松嶋菜々子主演/10月12日スタート)
www.fujitv.co.jp
もはや前世紀末となる1999年開始の医療ドラマ、13年ぶりの第6シリーズ。月9枠での放送というのも恋愛至上主義のかつては考えられなかったことだが、それを言えばこの間に医療ドラマは星の数ほど濫発されており、とっくのとうに飽和状態。
特に『ドクターX』以降は突出したキャラクターが求められている空気があり、さもなくば医療ものの中でもあえてニッチな領域に絞った設定を押し出すしか手がなくなってきている中で、果たしてこの老舗の看板を掲げたプレーンな真っ向勝負がどう映るか。
公式HPを見る限り、「働き方改革」「世代間の違い」「タイパ」などの「いまどきな」言葉が飛び交っており、内容を時代に合わせてアップデートしようとの意気込みは見えるが、それはすでにすべての作品における最低限の振る舞いになっている。
そうなると特筆すべき要素は実績のほかには見当たらず、新規の入口が見えない。
◆『南田南弁護士は天才肌』(関西テレビ・フジテレビ/月曜22:00/芦田愛菜主演/10月19日スタート)
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妙に響きの良い題名だなと思いきや、Netflixで世界的ヒットとなった韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の日本リメイク版とのこと。
すでにワールドクラスのブレイク実績という保険が大いにかかっている状態ではあるので、あとは自閉スペクトラム症の新人弁護士である主人公を、芦田愛菜がどのように解釈し演じるのかが最大の注目点になるだろう。
前クールには吃音の弁護士が活躍する『リーガルビート -逆転の法廷-』というテレ東のドラマがあったが、時系列的にはむしろあちらのほうが『ウ・ヨンウ』の大ヒットに影響を受けていると考えるべきか。
しかし毎度言っているような気もするが、やはり弁護士ものも依然として飽和状態。そこへ直近のヒット作を、このタイミングであえてリメイクしてまでやる必要があるのかという疑問を払拭できるのかどうか。
◆『妻を引退します』(テレビ東京/月曜23:06/朝日奈央・新川優愛主演/10月5日スタート)
www.tv-tokyo.co.jp
この枠には『シナントロープ』のような挑戦作を常に期待しているのだが、やはり枠の基板となっているのはあくまでも不倫夫への復讐劇であることに変わりはない。その点今回も、枠としてはやはり保守的な選択に見える。
これまでの同路線作に比べると、舞台が芸能界になっているのがやや異なる点か。だがそれは華やかでキャッチーな要素ではありつつも、日常生活のリアリティが減退してしまう危険性も当然ある。
【火曜日】
◆『kiDnap GAME』(フジテレビ/火曜21:00/坂口健太郎主演/10月6日スタート)
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日本を軸に台北、香港、シンガポール、マニラ、バンコクといったアジア中から実力派俳優陣を結集し、アジア7都市に渡る同時多発誘拐事件を扱うという壮大なストーリー、というかもはやプロジェクトと言うべきか。
「国際共同製作」という体制が吉と出るか凶と出るかはわからないが、これがNetflix以降のスタンダードになっていくのか。もちろんお隣の『VIVANT』あたりを強く意識しての試みでもあると思うが。そのスケールに負けないだけの内容を期待したい。
◆『いろはの恋は時代をかける』(TBS/火曜22:00/上白石萌音主演/10月13日スタート)
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令和の小学校教師の身体に、江戸時代の飛脚屋の娘の魂が乗り移ることによってはじまる、300年越しのロマンティックコメディ。
正直なところまたタイムスリップものか……と辟易してしまうが、時には今春の『リボーン ~最後のヒーロー~』のようにそれが効果的に機能するケースもあるので、やはり使いかた次第ではあるのだろう。
それにしても大昔の少女漫画設定すぎるような気もするが、それでも上白石萌音ならばなんとかしてくれるのか。
◆『会社員』(NHK総合/火曜22:00/吉田羊主演/10月13日スタート)
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不意に届いた脅迫文が、女性会社員のキャリアと組織を揺るがしていくオフィス・サスペンス。
オリジナル脚本を、公募で選ばれたメンバーがチームライティングで作り上げているというのが興味深い。劇団、アニメ、ゲームなど様々なジャンルのシナリオを手がけてきた人たちが含まれているようで、そのチームプレイが作品になにかしらの新しさ、あるいは強度をもたらすことになるのかは今後に向けても気になるところ。
【水曜日】
◆『相棒 season25』(テレビ朝日/水曜21:00/水谷豊主演/10月21日スタート)
www.tv-asahi.co.jp
現行連続ドラマとして日本最長シリーズの新記録を樹立することになるシーズン25。
もはや語るべきこともないが、毎度シーズン序盤はスケールの大きな事件を持ってくる傾向があるので、新規の人も入りやすいかもしれない――と、わりと最近『相棒』を受け容れられるようになった僕が言ってます。
◆『ポリティカルパン』(フジテレビ/水曜22:00/石原さとみ主演/10月7日スタート)
www.fujitv.co.jp
石原さとみと脚本家の野木亜紀子が『アンナチュラル』以来約8年ぶりにタッグを組んで放つ、政界を舞台にした怪盗エンターテインメント――とのことだが、その設定の土台にあるのが日本ではなく、架空の国「ニッポニア」というのがどうにも引っかかる。
というのも、野木亜紀子の前作『ちょっとだけエスパー』におけるファンタジックな能力設定が、個人的には微妙というか粗すぎていまいち乗りきれなかったからで、この人は人間関係を描く脚本は非常に魅力的だけれど、少年漫画的なフィクション設定に関してはあまり向いていないのではないかと感じていたところだったので。
しかし前作から本作への流れを踏まえると、近ごろその手の作品にハマッているのか、あるいはそもそも本来そういうのが書きたかったということなのか。一方でおそらくは架空設定にしないと政治のことは描きにくい、というテレビ局側の大人の事情もあるのかもしれないが、しかし同局(といっても関西テレビ制作だが)で『エルピス』や『銀河の一票』といったリアルな政治ドラマを放送していることを考えると、やはり脚本家の好みなのだろうと思う。
あとは細かくてどうでもいい部分なのかもしれないが、『ポリティカルパン』というタイトルの、「ル」を一個省略してくるあたりとか(こういうのなんて言うんだろう? 駄洒落、というわけではないけどなんかそういう感じ)、いまさらルパンを持ち出してくるあたりとかの感覚が、なんだかすでに上滑りしているような気がするのは気のせいか。
それでもやはり本作への期待度は高いが、そのフィクション度合い高めの設定に関しては、多少構えつつ観ることになるだろう。
◆『メリーベリーラブ』(日本テレビ/水曜22:00/チ・チャンウク・今田美桜主演/10月7日スタート)
www.ntv.co.jp
一夜にしてすべてを失った韓国人の空間プランナーと、いちご栽培に情熱を注ぐ日本の農業女子が繰り広げるロマンティック・ラブコメディ。
『愛の不時着』を手がけたCJ ENMと日本テレビによる共同製作でDisney+も絡んでいる、という見るからに海外展開を視野に入れた強めの布陣だが、今期妙にその手の共同製作ものが増えているのはやはり時代の趨勢なのか。というかむしろいまさらという気もするのだが、これまでそれだけ日本のテレビ局の腰が重かったということか。
空間プランナーと農業女子という表面的な設定はそれなりに新鮮味があるようにも見えるが、しかし成功者の男がふと挫折した直後に出会った女性と恋に落ちる、という「捨てる神あれば拾う神あり」的なタイミング重視の展開は、いかにも韓流ラブコメ設定という感じで既視感が強い。
【木曜日】
◆『アナログナース~デジタルってなんなんだよ!?~』(テレビ朝日/木曜21:00/松下奈緒主演/10月22日スタート)
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『ドクターX』『ザ・トラベルナース』と同じ世界線で繰り広げられる医療ドラマ三部作の第三弾、という位置づけの作品。そもそも『ザ・トラベルナース』が『ドクターX』と共通の世界線だとも思っていなかったが、どうやらそういうことになるらしい。
あえてつけ足された「~デジタルってなんなんだよ!?~」という副題にはどうにも蛇足感があるが、デジタルさらにはAIが猛威を振るう現代への逆張り設定をもうひと押ししておきたいという意図は見える。
そのうえで、ナースものというだけでなく「孤高のフリーランス看護師」というところまで『ザ・トラベルナース』と設定がかぶっているため、そことの差別化を図りたいという狙いもあるはず。主人公の性別の違いこそあれ、問題は題名ではなくその設定のかぶり自体であるような気もするのだが。
『ザ・トラベルナース』は中井貴一と岡田将生という年の差コンビによる丁々発止の掛けあいが絶妙で面白かったが、あのレベルのコメディを松下奈緒でやるつもりなのか、はたまた強気な『ドクターX』路線を目指すのか。すべては主人公キャラの魅力次第だろう。
◆『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ/木曜22:00/芳根京子主演/10月15日スタート)
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昭和12年を舞台に描く恋物語の続編。個人的に、前作にはあえて昭和初期設定でやる意味とリアリティが感じられず、興味が持てなくてスルーしてしまった。
その続編となる今作は夫婦が成立して以降の物語ということで、どこに山場を持ってくるのか逆に興味はある。もはや夫婦ドラマにほとんど不可欠となっている不倫などの不純な展開は、作風的におそらく使えないのだとすれば。
【金曜日】
◆『ボーダーズ 警視庁特殊事件対策班』(テレビ東京/金曜21:00/沢村一樹主演/10月16日スタート)
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異なる特殊技能を持つ5人の特設チームが、縦割り組織では対応しきれない「境界線の事件」に挑む。
刑事ドラマとしてはベタな「バディもの」に対抗して5人の「チームもの」となると、チームワークがハマッたときの爽快感が出せる代わりに、各キャラクターが薄味になったりいくらかかぶってしまうという危惧もある。もちろん技能的な振り分けはきっちりできているはずだが、性格的な部分でもきっちりと描き分けができるのかどうかが試される設定。
チームとしての化学反応が起きるかどうかは、各登場人物の「キャラ立ち」具合とその掛けあわせの妙にかかってくる。
◆『LOST10』(TBS/金曜22:00/横浜流星主演/10月16日スタート)
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主演の横浜流星と脚本の奥寺佐渡子が映画『国宝』のタッグであるというのがトピックだが、ドラマ好きとしてはむしろ『Nのために』等の湊かなえ原作ドラマとあの名作『最愛』を手がけた制作陣であるという情報のほうが重要であり、それだけでもう太鼓判を押したくなる。
そのうえで俳優陣には小栗旬、松下洸平、市川実日子といった実力派が揃っており、なおかつこの枠の本道とも言えるヒューマンサスペンス作となれば、もはや期待するなというほうが無理な話。
「全てを疑え」というテーマからしてすでにワクワク感があり、正直なところ死角はまったくないように見える。
◆『真田十勇士 SHADOWS OF THE TEN NINJA』(テレビ朝日/金曜23:15/岩本照主演/10月23日スタート)
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僕が無類の武将好き、さらには真田推しということでとりあえず観ることになるが、特に忍者アクションものが好きなわけではないので、あまりにアクションに重きを置かれると途中離脱する可能性も。
公式HPによれば「世界照準の超大型プロジェクト」とのことなので、人間ドラマ部分にも力を入れてくれていると良いのだが。
【土曜日】
◆『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ/土曜21:00/大泉洋主演/10月10日スタート)
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日曜劇場でお馴染みの池井戸潤原作ドラマ。ただし今回は、同じ池井戸原作、同じ駅伝設定ですでに『陸王』をやっているからなぁ……という、まだ観てもいないのにどうしても既視感が否めない。
とはいえ、『陸王』が主にシューズメーカー目線であったのに対して、本作は選手側とテレビ局側の両面から描く、というスタンスに明確な違いはある。
そういう意味では『陸王』は企業もの、本作はスポーツものと企業ものが半々、という棲み分けになるのだろうか。
池井戸原作の安定感は間違いないはずだが、唯一日テレが手がけた『花咲舞が黙ってない』だけが個人的にはピンと来なかったので、日テレとの組みあわせには一抹の不安が。
◆『あにいもうと』(テレビ朝日/土曜22:00/榮倉奈々・赤楚衛二主演/10月17日スタート)
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今期からの新設枠「サタデードラマ10」の第1作は、トラブルメーカーの兄を持ちながら念願の医師となった妹と、病と闘う妹を懸命に支える兄——2組の「兄妹」の運命が交錯する禁断のラブ・サスペンス。
あらかじめ公式HP上で、「地方編」と「東京編」の2部構成になることが予告されているのは珍しい。新枠の方向性を決定づける一作になるはずなので、通常の新作以上に力を入れてくることは間違いないはず。
【日曜日】
◆『VIVANT』(TBS/日曜21:00/堺雅人主演/7月26日スタート)
1クール目に比べると個人的にはやや乗り切れない序盤であったが、いよいよ盛り上がってきたところで二週に渡る中断を挟み、ここからはいよいよ山場の後半戦へ。
もうちょっと説明を減らしてくれないものかと思う場面は多いが、その情報量と情報密度がこの作品を支えているのも間違いはないので、いちいち巻き戻して台詞をいま一度聴き直したりしつつ観ることになる。
◆『もうパパ!』(ABCテレビ・テレビ朝日/日曜22:15/原菜乃華主演/10月4日スタート)
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仲良し家族チャンネルの裏側にある父と娘の関係を描く、動画配信者の令和版ファミリードラマ。
いかにも今っぽい設定だが、家族系動画を普段あまり観ていない人にも刺さるあるあるがどれくらいあるのだろうか。動画配信者ならではの問題に、視聴者がどれくらい我が事として共感できるのかが鍵か。
◆『ハイド&シーク 0秒前の彼女』(日本テレビ/日曜22:30/福士蒼汰主演/10月4日スタート)
www.ntv.co.jp
死んだはずの恋人からの着信と、そこからはじまる国家レベルの逃亡劇。
前クール同枠の『一次元の挿し木』や『Tシャツが乾くまで』もそうだったように、好きな人が生きているのか死んでいるのかわからないというのは物語を駆動させる設定の定番だが、その影響が国から追われるレベルにまで拡大するスケール感が本作の特筆すべき点か。
考察を誘う仕掛けが随所に張り巡らされていそうな作品。
【今期の個人的注目作】
◎『LOST10』
『最愛』シフトに死角なし。断トツの期待感。
○『kiDnap GAME』
国際展開を含む力の入りように期待。
△『ポリティカルパン』
今後の野木亜紀子脚本への信頼度を計る試金石。架空の国設定が全体へどのように作用することになるのか。
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