お笑いコンテスト評
一本目が終わった時点では、全体にやや低調な大会という印象だった。小ネタの単調な羅列であったり、笑いのないフリ部分が妙に長かったり、劇場サイズの長尺でゆったり観たいタイプのネタであったり。そんな近年にしては構成があまり行き届いていないネタが…
今年は出だしのカゲヤマの裸のインパクト一発で場が大いに荒れた印象があって、何よりも審査員がみなその影響をまともに喰らってしまっていたように見えた。その一撃のおかげで審査基準がほぼ過激さのみという麻痺状態に陥ってしまい、9組目のサルゴリラが圧…
『M-1』とは大きく異なる4点が、複合的に作用した結果どう出るのかがなんとも興味深い大会だった。その目立った違いとは以下の4点。①結成16年以上。(現行の『M-1』は結成15年以内) ②制限時間6分。(『M-1』は4分) ③審査員は観客、及び3段階による採点方式…
(※これは分析ではありません)そう冒頭から言い訳したくなるくらいに、今回優勝したウエストランドの漫才は、あらゆる方面の痛いところを突いていたように思う。そしてそれがいちいち面白さにつながっていた。その構造については、このあと個別レビューのパ…
コントはどうしても漫才と比較される宿命にあるが、この二つの決定的な違いといえば、やはりコントにおいては「動き」と「演技力」という見た目の比率が増えるという点にあるかと思う。『キングオブコント』も、今年は冒頭のクロコップがかなりの好感触を得…
今年は無名の初出場者が多いとの前評判だったが、蓋を開けてみれば最終決戦に残った三組は、いずれも昨年の決勝経験者。これをどう見るべきか。『M-1』では、初登場時が圧倒的に有利だという定説もあった。何度も出場していたり、テレビへの露出が増えていく…
笑いを生むためには「共感」と「違和感」の両方を必要とするが、今回は特にその両者の「ねじれ」をどこにどの程度設定するかの勝負だったように思う。 一般には「共感」のほうが強調されがちだが、それだけでは笑いは浅いものに終わる。それを単なる「あるあ…
「過剰」こそ正義である。笑いが感情を揺さぶるものである以上、それでいいと思う。多くの芸術/エンターテインメントがそうであるように。 もちろんバランス感覚も大事だが、圧倒的な過剰性を前にした場合、どんなにバランスを調整したところで歯が立たない…
今年は前半、90点ジャストという点数が審査員から濫発されていて、これはもちろん悪くない点数というか一般には良い点数と言ってもいいくらいだが、あんまり良くない傾向だなと思っていた。 なぜならばその90点というのが、いずれも「100点満点」ではなく「9…
【ニューヨーク】 相方が自作のラブソングを歌い出し、それに対して律儀にツッコミ続けるという形。 狙いとしては、たとえばYouTubeでよくあるような、リアルにヤバめの人が本気で作った的はずれな歌を遠くから観て笑うような構図で、よくも悪くも今っぽい笑…
今年のキーワードは「爆発力」ということになるだろうか。審査員の多くが、ことあるごとにこの言葉を発していたのが印象的だった。逆に言えば5分という持ち時間の中で、ただの笑いではなく「爆笑」レベルの笑いを取るのがいかに難しいかということでもある。…
漫才はボケが主役だと思われがちだが、ツッコミがどこまで攻めるのかも今や重要で。というのはたとえツッコミの普及以降、すっかり一般化したお笑い観であると思われるが、今回ほど「ツッコミの精度」で優勝が決まった大会は初めてかもしれない。これに関し…
今回はいつものようなまどろっこしい総論はなく、登場順に感想を書いていく。 逆に言えば、総論は各論に含まれている。 なんて格好つけてもしょうがなくて、しょせんは個人の感想に過ぎない。 【やさしいズ】 「正社員とバイトの格差社会」なんてお堅いテー…
「二本勝負の難しさ」を改めて感じる今大会だった。一本目で勝負に出ないと、そもそも二本目に進めない。しかし一本目で勝負をかけると、二本目のインパクトが減じてしまう。ましてや二本目はベスト3が出揃う高次元の戦いになるから、ここで一本目より弱いネ…
4分間のコントは基本的に、「現実から1箇所だけ何かをズラして、それをエスカレートさせて終わる」。それを基本の型として観ていくと、勝負どころはおよそ2箇所に絞られる。 1つは「どこを現実(常識)からズラすか」。もう1つは「それをどのように(そして…
毎度司会者や審査員は、口を揃えて「今回はレベルが高い」と言うものだが、今回は本当にレベルが高かった。ゆえに何か強引にでも確固たる評価軸を設定しておかないと、異様に審査が難しい大会だったと思う。 きっと審査員のうちの何人かは、自分の趣味嗜好を…
コントには、大きく分けてネタを「縦方向に掘り進める」型と「横方向に展開させる」型の2つがあるような気がする。いやコントに限らず、映画であれ漫画であれ文学であれ、そういう選択肢は常にある。 たとえば面白いワンフレーズを思いついたときに、それを…
やはり「キャラクター」は強い。「キャラクター」と「笑い」の間には、間違いなく密接な関係がある。 とはいえ『M-1グランプリ』は漫才、つまり「ネタ」の勝負である。しかし漫才のネタというのは、あくまでもネタでしかなくて、それ単体では存在し得ない。…
『キングオブコント2015』にて、500点満点中478点という最高得点を叩き出したロッチの1本目(試着室ネタ)。2本目のユルさが大きく足を引っ張って優勝こそ逃したものの、このネタが今大会のハイライトだったと感じた人も少なくないだろう。得点だけでなく、…
笑いにもどうやら、「コストパフォーマンス」という尺度があるらしい。それでは言葉の持つイメージが悪すぎるというのなら、思いきってそれを「純度」と言い替えてもいい。この二つはまったく違う、ともすれば正反対に響く言葉だが、「余計なものが削られて…
開始早々Aグループの審査で、志村けんの口から「わかりやすさ」というキーワードが出た時点で、この大会の審査基準は「わかりやすさ」に決定したように思う。笑いに限らずあらゆるエンターテインメントに当てはまることだが、「わかりやすさ」と「面白さ」は…
今年は新顔が多く、明らかに審査員席のほうが豪華に見えたが、全体のレベルとしては例年と比べても遜色なかったと思う。 むしろ違いが大きかったのは、今年から大幅にリニューアルされた審査方法。1対1対戦のノックアウト方式になったことで大量の死票が生ま…
設定の自由度が高いからといって自由にできるとは限らない。自由は時に足枷となる。 『THE MANZAI』や『キングオブコント』に比べ、ジャンル的には遙かに自由度が高い大会であるにもかかわらず、結局のところ毎度「あるある+α」の範囲内における勝負になり…
3番手のオジンオズボーンのネタが終わった時点で、今年のテーマは「展開」だなと思った。しかし僕は『キングオブコント2013』のときもどうやらそう感じていたようで、実際このブログに書いたレビューで展開について書いているが、コントだけでなく、いよいよ…
やはりこの大会において審査員が芸人であるというのは非常に大きい、というのを今年も所々で痛感した。が、結果的にはおそらくテレビの前でもちゃんとウケたであろう芸人が順当に優勝する、というのは例年通り。 人は自分に似た方向性を持つ同業者に対して厳…
まず最初に元も子もないことを言っておきたい。今回はロバート秋山が「体モノマネ」で出ていたら、圧勝していたであろうと。 いきなり話がそれたようだけども、実はこれこそが今回一番言いたいこと、そして言うべきことで、正直分析的な見方をするほどのネタ…
笑いをボケの質と量ではかるならば、今年はとにかく「量より質」の大会だった。量が増えたぶん一個一個のボケが浅くなるという、わりと当たり前の問題を孕んでいるコンビが多かったという印象。もちろん、その両立こそが理想なのだが。 以下、登場順に。 《A…
決勝進出者のラインナップを見た時点で、今回は明らかに無名選手が多いのは間違いなく、地味というよりはサッカーでいうところのU-23五輪代表のような、あえて実力者を排除しているような制作者サイドの狙いを感じたのだが、結果的にはいつものように「半数…