寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年10月4日(月)号~ラジオ発『キングオブコント』王者の凱旋~
【聴いた番組】
『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系列)
『パンサー向井のチャリで30分』(ニッポン放送)
今回の『踊り場』は、直後ということで『キングオブコント』優勝報告回の様相。空気階段は本当に愛されている。
もちろん彼らはコントの実力で評価されきたわけだが、その一方ではまた、この『踊り場』というラジオ番組をきっかけに育っていったという側面も間違いなくあるだろう。
考えてみれば、売れていない時期からラジオに抜擢されて、そこからじわじわと世間に認められていくパターンの売れかたは、最近ではかなり珍しくなっているのかもしれない。
いや改めて考えてみると最近どころか、昔からあまりなかったような気もしてくる。個人的にはラジオから売れていくというのは、ひとつの理想形だと思っているのだが、ただでさえ予算の少ないラジオに、若手を育てている余裕などないというほうが現実なのか。
『M-1』でも『キングオブコント』でも決勝に行っていない段階の芸人が、ラジオでいきなり冠番組を持たせてもらうケースを思い出そうとしてみると、正直彼ら以外にはほとんど思い出せないかもしれない。
わりと若い時期にはじまった印象のあるオードリーにしても、『ANN』がはじまったのは『M-1』準優勝後のことだし、『JUNK』勢は完全に売れきった状態ではじまった人ばかりだ。もちろん伊集院光には、その前のニッポン放送時代にブレイクのきっかけが明確にあったわけだが。
そうなると思い当たるのは『四千頭身のANN0』くらいかもしれないが、あれはむしろ早すぎて上手くいかなかった感がある。あとは三四郎も決勝には行っていないが、彼らは『ANN0』開始当初から「著しく売れかけている三四郎」と自己紹介していたことからもわかるように、先にテレビから売れた印象のほうが強い。
そういう意味で空気階段は、まさしくラジオ業界が待望した、新たなる真の「ラジオスター」と言ってもいいのかもしれない。
もちろんその前提には、若手育成システムとしての『マイナビ Laughter Night』という戦いの場が設けられていたのが大きい。そもそもこの『踊り場』という番組は、彼らが『Laughter Night』の優勝特典として得た特番をきっかけに、生まれた番組であるのだから。
ラジオというのは、そのメディアが誕生したタイミングからしてすでに、テレビの先を行く宿命を背負っていると僕は勝手に思っているのだが、現実には徐々にテレビのあと追いになってきていた部分も少なくない。
そう考えるとこの空気階段が辿ってきた道のりは、まさにラジオのお手本となり得るひとつの実例であり、輝かしい成功例として大いに評価されるべきだと思う。
くしくも最近ではまた、『24時のハコ』、『デドコロ』、『オールナイトニッポン0、X、PODCAST』枠など、各局で徐々に新規開拓枠が増加してきており、芸人ラジオ界隈は全体に活性化してきているように見える。
空気階段の『KOC』制覇により、その勢いがさらに加速することを願っている。ラジオ業界全体にとっても、彼らの優勝は大きな意味を持つことになるだろう。