音楽でいう「コンセプトアルバム」のごとく、「運命」というコンセプトで全体に統一感を持たせた、バカリズムの最新ライブDVD。
だが実際のところ、そのコンセプトは作品全体を完全に貫き通しているわけではなく、前半の①~④と最後の⑧で辛うじてコンセプトを支えている形。つまり中盤の⑤⑥⑦はいつも通りの、単体のコントが並ぶ。そして問題なのは、その「コンセプト枠外」にあるいつものバカリズムのコントのほうが、やはり面白いということだ。問題というか、救いというか。
その問題の、「運命」というコンセプトに沿った5本のコントは、いずれもコントというよりは「ひとり芝居」と言うべき内容。それらはある種小劇場的な、ネタの内容よりも演技力で勝負するような箇所が多く、バカリズムらしい言葉のセンスと言うよりは、表情や動きで笑いを取りにいく場面が多い。役者業が増えてきた段階ならではのチャレンジと言えるかもしれないが、正直なところ演技力云々よりも、台詞の弱さのほうが気になってしまう。ひとり芝居ならではの頻繁なカメラワークも演出過多で、シンプルな見せ方のほうがバカリズムの良さが生きるということを、逆説的に証明している。
さらには特典映像が6本も入っているが、最後の「相撲官能小説」を除いていずれも『バカリズム案』に及ばぬ内容。やはりさすがに多作すぎるのではないかという疑問が浮かぶ。
とはいえ、コンセプトとは関係のない⑤鬼 ⑥はやすぎた男 ⑦TABETA!の3本と、特典映像の「相撲官能小説」は信頼のバカリズム・クオリティで流石と唸らされる出色の出来。今回は全体のコンセプトに首を絞められた感があるので、もっと縛りをゆるくして自由にやってほしいと思うが、そうなると『バカリズム案』になってしまうのか。