テレビに耳ありラジオに目あり

テレビ/ラジオを自由気ままに楽しむためのレビュー・感想おもちゃ箱、あるいは思考遊戯場

     〈当ブログは一部アフィリエイト広告を利用しています〉

2014夏ドラマ感想~『若者たち2014』第1・2話~

しょっぱなから圧倒的な情念を感じるドラマである。渦巻いている、という言葉がこれほどふさわしいドラマは久しぶりかもしれない。どこもかしこも葛藤まみれの構図。それは言い替えれば古典的であるとも正統派であるとも言える。

そもそもが1966年に放送されたドラマのリメイクなので、古典的なのは当然かもしれない。だがそれにしても中途半端にモダンな設定にはなっておらず、古典的であることに迷いがない。配役にも脚本にも演出にも、クオリティのみで勝負してやろうという一本気な気概が感じられる。

初回から妊娠があり童貞喪失があり不倫がある。そのうちのひとつは未遂だが、ここまで同時多発的に家庭内トラブルが頻発するシチュエーションの強度は凄まじい。ラストに刑務所帰りの次男・暁(瑛太)が帰ってくる一瞬の予告編(本当に一瞬なのが潔い)まで含めて、1話目の濃密さは群を抜いている。

その情報量の多さと絡み合う人間関係の複雑さは、重さではあるが暗さではない。起こる問題はすべてそれぞれの人生を左右するヘヴィーなものばかりであり、答えのない命題だらけだが、誰の生き様にも根本的な明るさがある。それは妻夫木聡演じる主人公・旭の、文字どおり太陽のようなキャラクターが周囲を照らしているからかもしれないし、家族という集団が本来持っている(持っているはずの、持っているべき)エネルギーなのかもしれない。そういえば旭(あさひ)・暁(さとる)・ひかり・陽(はる)・旦(ただし)と、この一家は全員太陽にまつわる名を授けられている。

ムショ帰りの次男・暁を中心に構成された2話目は、1話目に比べれば随分シンプルな展開ではあるが、暁が犯した犯罪の内容が、どの角度から描写してもイマイチ伝わりづらく、後半に至るまで感情移入する糸口を見出すのが難しかった。感情的に理解しづらいという以前に、事件そのものがどうにも不明瞭で、誰が何をなんのためにしてこうなったのか、事件の全体像を把握させるための手がかりを小出しにしすぎたせいで、視聴者が状況を把握する以前に登場人物たちの感情が先走ってしまっている印象を受けた。

もちろん、視聴者に全体を把握させない状態でキャラクターを走らせるという演出も時に効果的ではあるが、あまりに前が見えないまま走り続けられると視聴者は脱落を免れない。

とはいえ、1話目で12.7%だった視聴率が、それでも不当に低すぎると感じていたにもかかわらず、2話目で7.8%まで下がってしまったというのはさすがにショックではある。数字にすべてが表れるとはもとより思っていないが、数字によってこの先制作されるドラマがある程度方向づけられてしまう可能性があるのも事実なので、やはり完全に無視することはできない。

この情念の滾りを濃密であると感じるか重すぎると感じるか、あるいは暗いと誤解するか。内容というよりは生理的に受けつけるか否か、肌に合うかどうかで評価が大きく分かれるとは思うが、個人的には今季もっとも良質なドラマであると思う。

【初回視聴率】12.7%