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『刑事7人』シーズン2初回レビュー~何人いても『刑事7人』~

あまりにも率直すぎるタイトルに騙されてはいけない。シンプルに見えて、これが案外「食えない」刑事ドラマなのである。嬉しい誤算と言いたい。

まず何よりも、人数の問題がある。といっても、「7人は多すぎる」とかそういう話ではない。そもそもこのドラマ、驚くべきことに「刑事が7人ではない」のである。

そりゃあ警視庁にいる刑事が全部で7人のはずないだろう、というような野暮を言いたいのでもない。あくまでもタイトルが指している「7人」とはこのドラマの主要キャストの人数であるということは、もちろん了解している。しかしまさにその主要キャストが文字通り「刑事×7人」であるかというと、実は違うのである。それは公式HPのイントロダクションにある以下の言葉からも明らかだ。

《“刑事の墓場”と揶揄される「警視庁捜査一課12係」に集められた個性あふれる刑事6人と、法医学教授の権威が各々の得意分野を生かし、難事件を解決に導いてきた同作が、さらにスケールアップして帰ってきます!》

驚くべきことに、堂々と「刑事6人」と書いてあるではないか! つまりタイトルを正確に言い直すならば、『刑事6人と法医学教授1人』ということになる。たしかに野暮な話だが、「刑事7人」でないことには間違いない。ちなみに触れるのが遅くなったが、このドラマは昨年放送された同名作品のシーズン2である。忘れないでおいていただきたいが、僕はいまこのドラマの魅力について書いている。

そしてさらに、である。このドラマのシーズン1を観たうえで、先日放送されたシーズン2の初回を観た視聴者は、冒頭からもれなく面喰らうことになったはずだ。なぜならば今度は、このドラマが「刑事6人」ですらなかったことがいきなり明らかになったからである。もう一度公式HPのイントロダクションから引用したい。

《第2シリーズではなんと東山演じる主人公・天樹悠が「機動捜査隊」に異動! さらに、片桐正敏(吉田鋼太郎)が「刑事総務課長」に出世し、山下巧(片岡愛之助)が謎の部署「未来犯罪予測センター」へ異動、そして法医学教授・堂本俊太郎(北大路欣也)が徹底して司法解剖に挑むなど、おなじみの登場人物たちの環境に変化が訪れています。》

なんということでしょう。このドラマのシーズン1とシーズン2の合間には、どうやら「劇的ビフォーアフター」な変革が起こっていたらしい。少なくともシーズン1では、最初の引用にもあるように、「警視庁捜査一課12係」という日陰部署に「刑事6人」が揃っていた。法医学教授の北大路欣也は警視庁所属でもなければ刑事でもないので、そこには当然含まれないわけだが、このドラマはいわば、同僚のチームワークを旨とする「警視庁捜査一課12係物語」だったわけである。

ところがこの突然の大異動である。しかもその異動は、視聴者の知らないうちに遂行されていたというのだ。

そしてその結果、本来のホームであるはずの「警視庁捜査一課12係」に依然として所属している刑事は、たったの3人になってしまったのである。「刑事6人」どころか、もはや実質的には「刑事3人」だ。いや依然としてメインの刑事は6人いる(謎の部署「未来犯罪予測センター」所属の片岡愛之助を刑事と呼んで良いものかは怪しい)のだが、そもそものアイデンティティであったはずの「警視庁捜査一課12係」にいる刑事が3人になってしまったというのは、間違いのない事実なのである。

そしてこのドラマに仕掛けられた「人数トリック」は、これでもまだ終わらない。シーズン2の1話目で活躍した所轄の刑事・青山新塚本高史)が、なにやら仲間に加わったっぽいのである。

これはいよいよ大変なことになった。これでは『刑事8人』ではないか。いや正確には、『刑事7人と法医学教授1人』ということか。だったら刑事はこれでやっと7人になるから、むしろようやくタイトルに忠実な内容になったと言うべきか。いやでも塚本高史も「警視庁捜査一課12係」の人間ではないから、やっぱり実質的には『刑事3人』と考えるべきなのか……。

むろんこんな人数云々の揚げ足取りは、このドラマの本質とはまったく関係がない――と思われるだろうが、むしろここにこそこの『刑事7人』というドラマの本質が、地味に見えて思いのほかチャレンジングなその姿勢と遊び心が、如実に現れているのではないかと見る。シーズン2で大胆な人事異動を試みたのは、こじんまりとしたチーム戦から、部署横断的な総力戦にスケールアップしたかったからだろう。

その影響で、シーズン1のときのような、机を並べた6人の何気ない会話から立ち上がる親密さが減少したのはちょっと寂しい。さらには、主人公の天樹(東山紀之)が、《初動捜査で見落とされている犯罪があることが許せないという「正義感」と、偏執的にすべての犯罪を完璧に把握したいという「病的なこだわり」から、24時間ほとんど眠らず覆面パトカーで生活し、管轄内を回っている》(公式HPのイントロダクションより)という追加設定も、さすがにスケール感に走りすぎだとは思う。

しかしそのぶん、日陰の一部署に縛られない新たな捜査の形と、部署間の軋轢を越えるねじれたチームワークが見えてくることになるだろう。「そのまんまに見えて実はそのまんまではなかった」題名に見え隠れする攻めの姿勢が、今後の展開を期待させる注目の刑事ドラマである。

『刑事7人』(テレビ朝日/水曜21:00~/主演:東山紀之

http://www.tv-asahi.co.jp/keiji7_02/

【初回視聴率】10.8%