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2022年秋ドラマ傾向と対策(遅れ馳せ)

今期はいつものようにゆったり構えているうちに、何本かの作品はすでにはじまってしまっているという不覚。このフライング気味のスタートは、このあと待ち受けるW杯シフトなのか、なんなのか。

しかしいまだ前クールのドラマ消化に忙しく、今期の作品はまだ一話も観られていない状態でこれを書いている。

ちなみに前クールのドラマで言うと、『六本木クラス』『純愛ディソナンス』『初恋の悪魔』『魔法のリノベ』あたりが特に面白かった。

中でも『純愛ディソナンス』は、個人的にあまり期待していなかったぶんだけ驚きが大きかった。失礼な言いかたになるかもしれないが、掘り出し物とはまさにこういう作品のことを言うのだろう。

それでは、今期のドラマを迎え撃つ心の準備を曜日順に。『科捜研の女』や『相棒』といった個人的に観る習慣のないシリーズドラマ、及びあまり期待できそうにない深夜ドラマに関してはあえて触れていないが、特に後者に関しては、まったく当たりがないとも言い切れないとは思いつつ。


【月曜日】
◆『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ/月曜21時/吉沢亮主演/10月10日スタート)
www.fujitv.co.jp

医療ドラマに関しては、よほどブラックでねじれた設定が裏に見えてきたりしない限り、いまさらなかなか観る気にならないというのが本音。明らかに飽和状態。

『監察医 朝顔』のスタッフが手がけているとのことで、そちらを観ていた人向け、という感じであるようにも見える。もちろん続編でもなんでもないようだが、同じスタッフで同じ方向性のドラマを作ろうとしてしまうところに、現在の保守的なフジテレビの姿勢が見えるような。

どうせ同じスタッフでやるなら、これまでとはあえて違う方向にチャレンジしようというような、冒険心と気概が欲しい。


◆『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ/月曜22時/長澤まさみ主演/10月24日スタート)
www.ktv.jp

テレビ局の人間が、冤罪疑惑の真相を追うという設定は、犯罪解決のプロである刑事や探偵モノというベタなジャンルに、新たな角度を持ち込もうといったところか。

ドラマ設定においては、たとえば刑事に対して、探偵はより自由かつリスキーな捜査が可能といったメリットがある。ではそれらと比較して、テレビサイドからのアプローチにどういった長所短所が見えてくるのか。

そんな「ならでは」の部分が明確に生きてくれば面白くなりそうで、「これなら刑事や探偵にまかせたほうが良いのでは」となれば興醒めとなりそうだが、果たしてどこで違いを生み出してくるのだろうか。


【火曜日】
◆『君の花になる』(TBS/火曜22時/本田翼主演/10月18日スタート)
www.tbs.co.jp

「7人組ボーイズグループの寮母になる本田翼」とのことだが、まずこの人数をドラマ内で捌ききれる気がしないのは、単なる杞憂だろうか。

もちろん、最近はやたらに人数の多いアイドルグループが多いという現状を踏まえた設定なのだとは思うが、似たような年代の似たような方向性のキャラクターが多数並ぶというのは、ドラマとしてはやはり難しいものがあるだろう。

まずは多くのアイドルグループが抱えている問題と同じく、グループ内でキャラクターの差別化ができるかどうかという部分に、このドラマ自体の命運も左右されることになるような気が。


【水曜日】
◆『ファーストペンギン!』(日本テレビ/水曜22時/奈緒主演/10月5日スタート)
www.ntv.co.jp

「シングルマザーの漁師」という、ひねりが利いているぶんだけあまり日常感のない(少なくとも多くの都市生活者には)設定に、「実話ベース」であることによってリアリティを担保するような構造。

主人公が出会う漁師が堤真一と来れば、かつての名作『やまとなでしこ』を思い出すが、あれは漁師ではなく魚屋の設定だった。

「都会に疲れた人々が憧れがちな、田舎暮らしの理想と現実」というテーマがなんとなく見えるが、その手の実話を『ザ・ノンフィクション』で頻繁に目撃している身としては、それらに予測のつかなさ及びリアリティで勝てるのか、というのがひとつの基準になってくる。

なかなか難しい勝負になりそうだ。


◆『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ/水曜22時/山田涼介主演/10月5日スタート)
www.fujitv.co.jp

漫画原作の「二重人格サスペンス」とのことだが、キャスト表を見てみると、川栄李奈門脇麦尾上松也早乙女太一高嶋政宏桜井ユキ佐野史郎遠藤憲一と、むしろ脇のほうに二重人格をやりそうなクセ者役者がズラリ。

もうこのメンツを見ただけで、ひと筋縄ではいかない展開が期待できる。

あとはこの枠特有の、ある種の安っぽさを上手く味方につけられれば(正直、ホームページのつくりからして……)。


【木曜日】
◆『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日/木曜21時/岡田将生主演/10月20日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

男性看護師という設定には、いよいよそれがドラマになる時代に来たかという感があるが、冷静に考えればありがちな医療ドラマになりそうにも見える。

それを『ドクターX』の脚本家が手がけるとなれば、さながら『ナースX』とでも呼びたくなるところ。だがそれが単なる冗談でもなさそうな証拠に、ホームページの人物紹介欄を見てみれば、なるほど「さすらいの看護師」やら「謎のスーパーナース」やらといったそれっぽい文言が躍っている。

とはいえ医療ドラマは、個人的にあまり期待できない分野ではある。


◆『silent』(フジテレビ/木曜22時/川口春奈主演/10月6日スタート)
www.fujitv.co.jp

「音のない世界」という設定からは、今年はじめのTBSドラマ『ファイトソング』を思い出す。あれは素晴らしい作品だった。

あちらは一発屋ミュージシャンや空手、さらには児童養護施設といった諸要素が随所で効いていたが、こちらは公式HPに目を通した限り、そういった物語のフックがあまり見あたらないように感じる。

そういう意味では、かなり正面切ったラブストーリーのようだが、前クールの『純愛ディソナンス』のように、思い切った展開がその先に待ち受けているのか、どうか。


【金曜日】
◆『クロサギ』(TBS/金曜22時/平野紫耀主演/10月21日スタート)
www.tbs.co.jp

2006年に、山下智久主演ですでにドラマ化されている漫画原作を、改めて完全版として仕切り直すとのこと。

せっかくのこのクオリティの高い枠で、焼き直しに頼るのその後ろ向きなスタンスはどうかと少し思いつつ、かつて以上に巧妙な詐欺が横行する現代にこそ、この作品をやる必然性というものがあるのかもしれない。

「詐欺師を騙す詐欺師=クロサギ」という「毒をもって毒を制す」方式は、勧善懲悪にリアリティを感じられなくなっている現在のほうが、むしろリアルに感じられる設定でもある。


◆『最初はパー』(テレビ朝日/金曜23時15分/ジェシー主演/10月28日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

タイトルの安直さに加えて、企画・原作・脚本に秋元康、総合監修に佐久間宣行という並びに、そこはかとない地雷臭が。

秋元康絡みという意味では、『真犯人フラグ』は楽しめたのだが、彼が脚本まで深く入り込むとあまり良い印象がないというのが正直なところ。

一方で佐久間宣行に関しても、純粋なお笑い番組の制作やラジオパーソナリティーとしてはかなり信頼しているが、ドラマに関しては特に際立った印象がない。そのうえ「総合監修」という、むしろ秋元康がやりそうな作品との距離の取りかたに、どこか及び腰な姿勢が見えるような。

ジェシー×市川猿之助というミスマッチなキャスティングは、ちょっと気になると言えば気になるが、そのあたりの「狙ってる感」もいかにも秋元康的で……。


【土曜日】
◆『祈りのカルテ 研修医の謎解き観察記録』(日本テレビ/土曜22時/玉森裕太主演/10月8日スタート)
www.ntv.co.jp

またしても医療ドラマということですっかり辟易気味だが、そうでありながらも「ハートウォーミング・ミステリー」を謳っているところが、他の医療モノとなにかしらの違いを生み出してくれるのだろうか。

個人的にはミステリーのほうが好きなので、むしろそちらの比重をどんどん増やしていってほしいところだが、そうなると医者設定の旨味が失われるというジレンマ。


◆『ボーイフレンド降臨!』(テレビ朝日/金曜23時00分/髙橋海人主演/10月15日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

今期は特に正面切ってのラブコメ作が稀少なため、三角関係を標榜するこのドラマが、もっともど真ん中のラブコメということになるのかもしれない。

主役の髙橋海人には役者として注目しているが、その恋愛対象が桜井ユキ田中みな実というのは、ちょっと癖の強すぎる人選であるような。


◆『ジャパニーズスタイル』(テレビ朝日/金曜23時30分/仲野太賀主演/10月22日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

シチュエーションコメディ云々以前に、近年『コントが始まる』や『俺の話は長い』といった秀逸なコメディ作品を手がけてきた脚本家・金子茂樹への注目度が個人的には非常に高い。

そのうえで仲野太賀主演、さらには市川実日子柄本明までいるとなれば、さらに期待度を上げざるを得ない。

あとは30分ノンストップの一発勝負という形式が、吉と出るか凶と出るか。今期もっとも意欲的なドラマと言えるだろう。


【日曜日】
◆『アトムの童』(TBS/日曜21時/山﨑賢人主演/10月16日スタート)
www.tbs.co.jp

ゲーム業界を舞台にしたドラマ作品というのは、意外とあまりなかったのかもしれない。そういう意味で、新たな領域を開拓しようという前向きな意欲を感じさせる。

そこに本格的な企業ドラマを得意とする日曜劇場が真正面から取り組むというのは、とても興味深い流れであるように思う。軽くなりがちなエンタメ業界設定を扱うにあたって、重厚な雰囲気を出せる日曜劇場は、あるいはもっとも適した枠であるのかもしれない。


◆『霊媒探偵・城塚翡翠』(日本テレビ/日曜22時30分/清原果耶主演/10月16日スタート)
www.ntv.co.jp

霊媒師×推理作家という異色のバディによるミステリー作。

フィーリング×ロジックという意味で、互いに補い合う関係になっているようだが、やはりオカルト要素がそこに入ってくると、途端に安っぽくなる印象は否めない。

清原果耶と小芝風花という勢いを感じさせるキャスティングには、注目せざるを得ないが……。


【今期の個人的注目作】

◎『ジャパニーズスタイル』
 名作『コントが始まる』の脚本家、及び演技派を揃えた出演者への信頼。

○『アトムの童』
 新鮮な設定と歴史ある枠の新旧合体効果に期待。

△『親愛なる僕へ殺意をこめて』
 スリリングな設定と脇役ラインナップの妙。

2022年夏ドラマ傾向と対策

傾向と対策というか迎え撃つ準備というか。むろん撃つ必要はないのだが。いわば勝手に心の準備。


【月曜日】
◆『競争の番人』(フジテレビ/月曜21時/坂口健太郎、杏主演/7月11日スタート)
www.fujitv.co.jp

前クールの『元彼の遺言状』と同じく新川帆立原作。それだけ局側の原作者への評価が高いということだろうが、『元彼~』がバラバラのパーツを寄せ集めた統一感のない内容だったことを考えると、少なくともドラマに関してはあまり期待はできないかもしれない。

作品の舞台は公正取引委員会。昨今は刑事、医者、弁護士ものが多い中、それ以外で正義感を発揮できるジャンルを各局模索している感があるが、いよいよここまでニッチなところを突いてきたかという設定。そのぶん、キャッチーさには欠ける。


◆『魔法のリノベ』(フジテレビ/月曜22時/波瑠主演/7月18日スタート)
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『家売るオンナ』のヒット以降、不動産関連のドラマもちらほら。前クールでやっていた『正直不動産』も、わりと評判が良かったようで。

今度はそこからまた一本奥へ入った感じで、住居の「リノベーション」を手掛けるという部分にポイントを絞ってきた。

間宮祥太郎は、前々クールの『ファイトソング』と前クールの『ナンバMG5』が素晴らしかったので、自然と期待してしまう。とはいえ、設定の地味さは否めないが。


【火曜日】
◆『ユニコーンに乗って』(TBS/火曜22時/永野芽郁主演/7月5日スタート)
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どちらかというと日テレ「水10」枠っぽいお仕事ドラマ設定。

主人公が「スタートアップ企業の若き女性CEO」と言われると、いかにも今っぽさど真ん中すぎてむしろリアリティに欠けるような気がするが、その脇に西島秀俊がいるならばなんとかなるような気がしてしまう。『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』で株を上げた杉野遥亮も注目の俳優。

主役が単なるイチ社員ではなく会社のトップであるというところが、仕事に恋にどんな影響をもたらしてくるのか。そこが他との明確な違いを生み出してくれると面白い。


【水曜日】
◆『刑事7人(シーズン8)』(テレビ朝日/水曜21時/東山紀之主演/7月13日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

シーズン1時代の、適度に緩くチャーミングな雰囲気はどこへやら。すっかりシリアスな刑事ドラマとして、毎度微妙に編成を変えながら安定したクオリティを保ってきたこの作品も、気づけばすでにシーズン8。

このドラマはシーズンごとに毎度わりと大胆に変更してくる部分があって、長く観ている視聴者も飽きさせない。個人的には好きなシリーズドラマのひとつなので、期待している。


◆『家庭教師のトラコ』(日本テレビ/水曜22時/橋本愛主演/7月20日スタート)
www.ntv.co.jp

過保護のカホコ』『同期のサクラ』と同じ響きを持つ遊川和彦脚本。今回はその二作とは違って高畑充希ではなく、橋本愛が主役というのが大きな違いで、そうなればあの素直で無邪気なキャラクターともだいぶ変わってくるだろう。

今回は設定が家庭教師ということで、同じく家庭に入り込んでいくという意味でも、遊川脚本でいえば『家政婦のミタ』寄りのキャラクターか。キャラの強さにおいては、今期随一の予感が。


◆『テッパチ!』(フジテレビ/水曜22時/町田啓太主演/7月6日スタート)
www.fujitv.co.jp

前クールの『ナンバMG5』で、視聴率はイマイチだが内容的なクオリティと満足度は非常に高いという複雑なデビューを飾ったフジテレビの「水10」枠。

ヤンキーものに続いて陸上自衛隊を持ってくるあたり、枠のコンセプトであるらしい「ニューヒーロー」という軸はまだブレていないようだ。それにしても今どき珍しい「漢」路線。

自衛隊設定といえば瑛太北川景子の『リコカツ』を思い出すが、あれはあくまでも離婚活動=リコカツのほうがメインの作品ではあった。

対して完全に自衛隊をドラマの中心に置いた場合、さすがに窮屈な印象を受けるが、そこからどうやって一般視聴者へ共感の扉を開いていくのか。そこがネックになりそうな雰囲気は漂っている。


【木曜日】
◆『六本木クラス』(テレビ朝日/木曜21時/竹内涼真主演/7月7日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

Netflixで世界的に大ヒットしたドラマを、場所を六本木に変えてリメイク。安直すぎて笑いそうになる移植だが、元が元だけにクオリティは保証されていると見ていいだろう。

脇を香川照之が固めているというのも、その重しになるはず。


◆『純愛ディソナンス』(フジテレビ/木曜22時/中島裕翔主演/7月14日スタート)
www.fujitv.co.jp

高校教師と生徒との禁断の愛、となるともちろんかつての『高校教師』を思い出してしまうが、まさにそういう狙いが見える。さらにこの木曜10時の枠で禁断の愛と言えば、『昼顔』の幻影がずっとつきまとっているわけで、その二作の名を挙げれば企画を通す必然性はあるように思える。

だが逆にいえばよくある古典的な設定ではあるため、どこで新しさを出していくのかが難しい。


【金曜日】
◆『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(TBS/金曜22時/有村架純中村倫也主演/7月8日スタート)
www.tbs.co.jp

「リーガル・エンターテインメント」と言われると、さすがに「またか!」とつい思ってしまうが、今回はスタッフが『MIU404』や『最愛』を手掛けたチームとなれば、自動的に期待せずにはいられない。

だからといって事前にどこをどう期待できるというポイントは特に見あたらないのだが、ダブル主演を務める有村架純中村倫也にハズレが少ない印象はある。

つまりラインナップ的に鉄板、というほかないが、それはかなり信頼できる根底の部分でもある。


◆『NICE FLIGHT!』(テレビ朝日/金曜23時15分/玉森裕太主演/7月22日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

パイロットが主役のドラマといえば『GOOD LUCK!!』という金字塔があるが、個人的にはあまりリアリティを感じられない設定のひとつ。

だが公式HPの番組概要を見る限り、パイロットものというよりは恋愛がメインであるようなので、職業に関してはあまり気にしなくてもいいのかもしれない。

玉森裕太中村アンという役者陣は魅力的だが、逆に言えばそこに頼り切った作品であるようにも。


【土曜日】
◆『空白を満たしなさい』(NHK総合/土曜22時/柄本佑主演/6月25日スタート)
www.nhk.jp

すでに一話目が放送されているが、原作が純文学というわりにはミステリー然とした立ち上がり。

かと思いきや、後半になっていかにも純文学的な重さがグッと増してくる。阿部サダヲの怖さが際立つ。

かなり暗く思い作風なので観る人を選ぶとは思うが、この先が気になるのは確か。


◆『初恋の悪魔』(日本テレビ/土曜22時/林遣都、仲野太賀主演/7月16日スタート)
www.ntv.co.jp

『カルテット』の坂元裕二が書く刑事ドラマ、という時点で話題性は充分か。そのうえで題名には恋愛要素が入り、公式では「ミステリアスコメディー」と紹介されている。

つまりベタな「刑事ドラマ」というジャンルに、あらゆる要素を持ち込んでその領域拡大を図ってやろうという野心が見える。メインキャストはやはり4人であるらしく、脚本家のカルテット編成へのこだわりも見える。

個人的には『カルテット』は色々やろうとした結果散漫な印象で、坂元裕二作品であれば『最高の離婚』や『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』のほうが面白いと思っているが、今回はどのような作風で来るのか。

「刑事ドラマ」という古典的ジャンルに風穴を開けるような作品を期待したい。


【日曜日】
◆『オールドルーキー』(TBS/日曜21時/綾野剛主演/6月26日スタート)
www.tbs.co.jp

「引退したアスリートの第二の人生」というテーマは、同じく福田靖が脚本を手掛けた前クールの『未来への10カウント』と共通している。脚本家の中で、いま考え続けているテーマなのだろう。

ただし局が違うとはいえ、二期連続となると似たようなパターンに陥るのではないかという危惧はある。

すでに一話目が放送されており、とりあえずその前半部分を観たが、いまのところちょっとありがちで安っぽい展開であることは否めない。

それは全体としては楽しめた『未来への10カウント』でも少なからず感じていた部分だが、どうも意図的に漫画的なベタをやっているようにも感じられる。『HERO』を書いていたころの福田靖に比べると、脚本にだいぶ照れがなく臭みがある。

――と思って調べてみたら、『HERO』はもう20年前の作品。だとすれば、すでに比較対象とはならないかもしれない。とはいえ「日曜劇場」なので、クオリティは伴ってくるはず。


◆『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』(日本テレビ/日曜22時30分/永瀬廉主演/7月24日スタート)
www.ytv.co.jp

「もしも戦国武将たちがクラスメイトだったら」という、いかにも漫画的なフィクション設定。この時点でだいぶチープな印象を受けるが、基本はヤンキー学園ものと考えるべきなのか。

この枠は『あなたの番です』や『真犯人フラグ』といった考察系ミステリーを2クールに渡ってやったり、かと思えばこういう若者向け(?)な漫画原作のドラマを繰り出してきたり、わりと節操がない。

個人的には前者のほうが楽しめるのだが、ひとりの戦国武将好きとしては、これもまた楽しめるのか、むしろ武将好きだからこそ変にイジッてほしくないと感じるのか、微妙なところではある。


【今期の個人的注目作】

◎『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』
 『MIU404』『最愛』チームへの信頼の厚さゆえ。
 

○『初恋の悪魔』
 脚本の力を信じて。ただしあまり『カルテット』的でないことを願う。
 
○『刑事7人(シーズン8)』
 また全編を一本の長編としてダイナミックに構成してくるのか。一話完結に戻るのか。何かしらのテコ入れにも期待。

△『家庭教師のトラコ』
 『カホコ』と『サクラ』は楽しめたが、女優が変わると全体がどう変わるのか。

2022年4月期春ドラマ序盤レビュー

春ドラマ開始前に書いたこちらの記事への、アンサーというか説明責任というかとりあえずの答えあわせというか。今期の各ドラマに関する寸評を書いてみたい。

ちなみに今回は特に、予想も期待も大きくはずれている。脚本家を信頼しすぎたせいかもしれない。

radiotv.hatenablog.com

とりあえず現在の視聴状況に合わせて、【視聴継続中】【HDD蓄積中】【挫折】の三段階評価(?)をつけてみた。【HDD蓄積中】に関しては、録画がどんどん溜まっていって、この先続きを観るかもしれないし、観ないままやがて消してしまうかもしれないし、という状態。


【月曜日】
◆『元彼の遺言状』(フジテレビ/月曜21時/綾瀬はるか主演)【HDD蓄積中】
意味深な遺言状の謎をばら撒くだけばら撒きまくった初回。それを最終話にかけてじっくり解明していくのかと思いきや、その展開は2話目であっさりお開き。3話目からは普通の地味な「町弁」ものになってしまった。

前クールの『ミステリと言う勿れ』で味を占めたのか、初速を高めるために序盤に大きな展開を持って来ておいて、あとは地味な話をマイペースにやるという竜頭蛇尾な手法。

序盤にいったん摑んでしまえば、視聴者は惰性で観続けてくれるだろうという甘えは明らか。いわば吉野屋作戦。


◆『恋なんて、本気でやってどうするの?』(フジテレビ/月曜22時/広瀬アリス主演)【視聴継続中】
古典的な少女漫画的設定で、正直なところ主役の恋愛自体にそこまで物語を牽引する力は感じないが、「男女六人計三組による三者三様の恋愛」という合わせ技で見続けている感じ。

特に意味ありげな藤木直人の正体は気になるところ。


【火曜日】
◆『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS/火曜22時/上野樹里主演)【視聴継続中】
ここも主役というよりは、父親の松重豊井川遥の恋愛のほうが気になる。

主人公の恋愛に関しては、いつどこで恋愛感情にスイッチが入ったのかがわかりづらく、視聴者の感情がやや置いてけぼりを喰らう印象。

親子が互いの恋愛をどうサポートしあっていくのか(時に邪魔になったりもしながら)というのが、今後の見どころかもしれない。


【水曜日】
◆『悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~』(日本テレビ/水曜22時/今田美桜主演)【挫折】
30年前のリメイク作ということで、古さを懸念していたがやはり古かった。設定はアップデートしていても、やはりキャラクターが古い。

脳天気な主人公に悩みがなさすぎて、ついていけず2話目で挫折。トラブルに遭遇しても苦悩しないので、物語の中心にあるべき葛藤というものが存在しない。この人はわざわざ見守っていなくとも、放っておけばどこでも誰とでも上手くやっていくだろう、という気になってしまった。


◆『ナンバMG5』(フジテレビ/水曜22時/間宮祥太朗主演)【視聴継続中】
ヤンキーものはむしろ苦手な部類だが、細部まで気が利いていて面白く、コメディとしてよくできている。個人的には、今期イチの掘り出しもの。

配役も見事にハマッており、ストーリーも喜怒哀楽全方位に充実している。

二話目の放送延期でやや躓いた感はあるが、このクオリティは信頼に値するだろう。


【木曜日】
◆『未来への10カウント』(テレビ朝日/木曜22時/木村拓哉主演)【視聴継続中】
オーソドックスな学園ドラマであり、やや強引な展開も見られるが、木村拓哉の存在感でねじ伏せられてしまう。特に今回は、プレイヤーではなくコーチという一歩引いたスタンスであるからこそ、その存在が全体の中で際立って見える。

彼のドラマが始まるたびに、「いつものキムタク」と揶揄する声も聞かれるが、それは物事をあまりに大雑把に捉えすぎなのではないかと思う。黙ってそこに居るだけでもモテてしまう「あの日のキムタク」の姿は、ここにはない。

もちろん、最終的に主役にもっとも美味しいところが還元される構造になっているのは、どんな作品でも当然の話で、でなければその人を主役とは呼ばない。

脇を固める満島ひかり生瀬勝久のコメディ的な間の良さも存分に発揮されており、笑える会話も多い。滝沢カレンの演技が自然なのにも驚いた。今期1、2を争う楽しみなドラマになっている。


◆『やんごとなき一族』(フジテレビ/木曜22時/土屋太鳳主演)【視聴継続中】
極端ではあるがベタなシンデレラストーリーではあり、感情移入が難しいかと思ったが、意外と楽しみながら観ている。

それは設定的に悪役の分量が多く、かつそれぞれが遠慮なく嫌な奴として描かれているからで、とにかく主役が正しいと思うことさえ貫けば、どこと当たっても自ずから爽快な逆転劇が生じる構図になっている。


【金曜日】
◆『インビジブル』(TBS/金曜22時/高橋一生主演)【HDD蓄積中】
観続けるべきか悩んでいる。

どうも柴咲コウの役どころに、リアリティを感じられないというのが大きい。裏社会を牛耳る「犯罪コーディネーター」として一目置かれている存在には、どうにも見えないからだ。

その危険かつ微妙な立場を貫くには、とんでもない人望、才能、スキル、経歴、非情さ等が必要であるに違いない。それらを含めての、圧倒的威圧感が求められる。

あえてそういうものを感じさせないのが、逆に非凡さを感じさせるという漫画的なキャラクター造形なのだろう。だが命がけで本能的に生きている人たちを前に、そんなひねりは通用しないだろうと思ってしまう。

人は追い込まれれば追い込まれるほど、古典的な基準で人を判断するものだから。


◆『家政婦のミタゾノ5』(テレビ朝日/金曜23時15分/松岡昌宏主演)【視聴継続中】
大好きな作品なのだが、シーズン5ともなると、さすがにネタ切れ感は否めない。

既視感のある展開が多く、観ていて意外性を感じづらくなってきているのは間違いない。少年漫画であれば、強力なライバルキャラでも登場させたいところ。

まだ期待を捨てきれないので、観続けるつもりではあるが……。


【土曜日】
◆『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ/土曜22時00分/ディーン・フジオカ主演)【挫折】
「科学捜査」という部分を打ち出したいのはわかるが、そこに頼りすぎて、肝心の人間ドラマの部分がおろそかになっている印象。

不思議な事件が起きているはずなのに、その裏にある人間たちの心の動きが単純化されすぎているので、いまいち興味を惹かれなかった。


◆『クロステイル〜探偵教室〜』(フジテレビ系列/土曜23時40分/鈴鹿央士主演)【挫折】
脚本家に期待しすぎたかもしれない。イチ推し予想したにもかかわらず、2話目で早々に挫折(気持ち的には1話目の最中にはすでに)。

思いのほかちゃんとした探偵術を学ぶ内容で、ミステリ的な緊張感も、コメディ要素も乏しい。

東海テレビ枠は、やはり当たりはずれが激しい。


【日曜日】
◆『マイファミリー』(TBS/日曜21時00分/二宮和也主演)【視聴継続中】
解決策にかなり強引な部分も多々あるが、物語の緊張感は持続している。「考察」を誘発するような、いまっぽい作りのドラマである。

とはいえ、『真犯人フラグ』などに比べると、考察すべき要素はさほど多くはないので、それだけを期待するとやや淡泊に感じるかもしれない。そのぶんは日曜劇場らしい、人間ドラマの部分で補っていくことになるのだろう。

とりあえず今期で一番、先が気になるドラマではある。


◆『金田一少年の事件簿』(日本テレビ/日曜22時30分/道枝駿佑主演)【挫折】
アニメでやっていたころはそこそこ観ていたが、こうして学園ドラマとしての部分を強調されると、やはり人が多数死んでいるにもかかわらず、彼らが平然と学校に通えていることに違和感を感じてしまい、1話目で挫折。