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2021/8/14(土)のラジオ聴取日記~『三四郎ANN0』、パ行変格活用という魔展開~

土曜ラジオ

【聴いた番組】

三四郎オールナイトニッポン0』(ニッポン放送

『小籔・笑い飯の土020』(MBSラジオ

三四郎ANN0』では、毎週のようにミラクルが起きている。

話を聴いているうちに、気づけばいつのまにか遥か遠い場所へと連れ去れている不可思議な展開の妙。

今回は、先週の欠席により皆勤賞の目がなくなった相田に、「お前はこれから何を『誇り』に生きていくんだ?」と問う小宮、という構図がスタートライン。

普通は「武器」と言うところを「誇り」とあえて気高く表現してみせるのが、とても小宮らしい。

だがいつもながら、そこから話は首の皮一枚で奇妙な展開を見せる。

そんな小宮の問いに対し、自らの「武器=誇り」として、佐藤二朗のモノマネを披露する相田。それなりに似ているが、なぜかそこにできもしないモノマネで小宮も参戦し、しばし佐藤二朗佐藤二朗の会話が繰り広げられる。

だが途中で小宮の佐藤二朗の口調が徐々におかしくなり、いつのまにかボビー・オロゴンのモノマネになってゆく。

そこで相田がそれはボビーのモノマネだと指摘すると、なぜかそれを認めずに、これは「ポピー・オロポン」だと奇妙な主張をしはじめる小宮。ボビーはちょっと問題を起こしたことがあるのでここで出すわけにはいかず、あくまでも別人のポピーであるというスタンスを貫きたいらしい。

そこからはなぜかスムーズに、有名人の名前をところどころ「パ行」に入れ替えて呼びはじめる「パ行変格活用」合戦へ突入。いや元がパ行ではないので全然「パ変」ではないのだが、とにかく名前に「パ行」をなんとか織り混ぜてわかりにくくするという謎の遊びが展開される。

そしてそんなわかりにくさを弄ぶ到達点として、それは自然とクイズの様相を呈しはじめ、メールでも難易度の高い問題が続々と寄せられる。そうやって最終的には、この不可解な展開がやがてこの番組らしく、リスナーを巻き込んでひとつの大きな渦を作り出してゆく。

見てのとおりまったく不可解な展開であるのに、説明しようと思えばなんとか説明できてしまうこの一本の糸だけ理が通っている感じが、やはり三四郎の凄さだと改めて思う。もちろんいくらか説明できたところで、その面白さまで伝えきれるとは思っていないが。

こんなに細く頼りない糸を思いっきり引っ張れる勇気などなかなか起こせるものではないし、そのためにはそれが引っ張ってもきっと切れない糸だと見極める能力が必要になってくる。

この糸は太すぎたら当たり前すぎてスリルも意外性もなく、細いからこそ面白くなる。それはあえて狭いところを通すイニエスタのスルーパスのように、難易度は高いが通ってしまえば実に鮮やかで、決定的な得点チャンスを生み出すことができる。

しかしそうやって量産された得点の数々も、聴き終えてみればすべて無効になっているようで、ただただ笑った感触だけが体に残る。

その「何も残らなさ」こそが笑いの純度の高さであり至高であり、その虚無感に浸るところまでが、この番組を聴くという稀有な体験だと思っている。