2021/7/2(金)のラジオ聴取日記~中川剛の文体論――さんまワクチン接種済~
【聴いた番組】
『ぺこぱのオールナイトニッポンX』(ニッポン放送)
『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)
『ハライチのターン』(TBSラジオ)
『アッパレやってまーす!(水曜日)』(MBSラジオ)
『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
中川家は漫才もアドリブ満載だが、ラジオでのフリートークとなるとその自由度は他の追随を許さない。突然の切り返しで観客を驚かせるだけでなく、もはや助手席の相方をもドアの外へ振り落とすレベル。
この日もいつもながらの、長尺のオープニングトーク。
話題は流れ流れて『M-1』の話へ至り、剛がいよいよ核心に迫るべく独自の『M-1』論へと差しかかる。
だが話の頂点が見えてきた瞬間、彼は「もうええか、こんな話」と突如として我に返り、自ら提示した話題をバッサリと打ち切って話題を転換してしまう。
聴いていたリスナーも相方の礼二も、ここからが聴き所だと思っていたので「なんで?」と呆気に取られるが、一度切れた剛のギアはもはや望まれていた方向へはさっぱり入らない。
普通に考えればこれは「期待はずれ」や「肩すかし」ということになるはずなのだが、しかし剛がこれをやるとなんだか憎めない。
むしろどこで彼が自分の話に真っ先に飽きるのかを、こっそり期待している気持ちすらある。
剛は漫才中に入れる突然のアドリブについて訊かれた際にも以前言っていたが、自ら作ったネタに、観客よりも先に自分が飽きてしまうのだという。そうなるともう、決められた台詞(といっても自分で決めた台詞なのだが)を言うのが恥ずかしくなってしまうらしい。
なんて誠実な人なんだろうと思う。何に対しての誠実さかというと、自分の気持ちに対して。そしてそれは、笑いに対しての誠実さでもある。自ら飽きてしまった味をそのまま客に供するのは、嘘をついていると彼は考えているのだと思う。
中川家の二人はこうなった要因を、「さんまさんのせい」だと普段から良く言っている。我々はさんまワクチンも接種済だから、とと。
むしろ「さんま病」にかかっているのか、かかりたくないから接種したのかわからないが、この話題を脱臼させる剛のスピード感と急ハンドルは、感触としてはさんまともまた異なるものだ。いわば強力な変異種というべきかもしれない。