【聴いた番組】
『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)
『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』(TBSラジオ)
オードリーは若林だけでなく、いつのまにか春日のフリートークも面白くなっているのが凄い。
その事実は、以前春日が『すべらない話』でMVSを獲ったあたりで客観的に証明されたように思うが、だからといってこのラジオ以外では、いまだ彼にフリートークの機会があまりないのは不思議だ。見た目に武器がありすぎるからかもしれない。
あるいは、ラジオ前にはスタッフと構成を練り直したりなど周到な準備をしていると以前語っていたから、フリートークはここだけと決めて一球入魂する方針なのか。
それはそれで毎週やっているわけだから、結果的に結構な量にはなっている。
今回は、銀行員に自分の存在をなかなか気づいてもらえなかった話。
ただ税金を払いにいっただけなのに、奥の応接室に連れ込まれ、手を替え品を替え遠まわしに素性を探られ続けるという不条理な展開。
マスクをしているコロナ禍の状況ならではの展開ではあるが、その不毛なやりとりはなんだかカフカの小説を読んでいるようで、やはりいつの時代にも、お堅い職場で浴びせられる「お役所的対応」に翻弄される話には普遍的な滑稽さがある。
考えてみれば、実はキャラクターの強い芸人のほうが妙な人や状況を引き寄せがちであるはずだから、日常の中にトークの種自体は多いのかもしれない。
となればキャラクターの強い人が、その種を実らせるトーク力を身につけたらまさに鬼に金棒。
一般に共感を呼びやすい日常における気づきを提示する観察者としてのトークはあまり向いていないかもしれないが、その代わり周囲に翻弄される主人公視点の「巻き込まれ型」のトークには、聴き手をも巻き込む吸引力がある。
そう、春日にはいつでも圧倒的な「主人公感」があるし、あってほしいとも思っている。