寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年11月5日(金)号~きつねの渦巻くディスとトム・ブラウンの恋愛リアリティーショー~
【聴いた番組】
『きつねのこんこんらじお』(FM NACK 5)
『トム・ブラウンのニッポン放送圧縮計画』(ニッポン放送 Podcast Station)
『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)
『アンガールズのジャンピン』(ニッポン放送 Podcast Station)
『クリープハイプ 尾崎世界観 声にしがみついて』(JFN系列)
『こんこんらじお』では、先般の「きつね大津嫌われている説」からの「実は大津モテすぎ問題」が再燃。
今回はゲストのトンツカタン森本に加えて、大津応援メールを送ってきたリスナーまで巻き込んで、大津vs淡路vs大津派リスナーのディスりあいが繰り広げられる。このモードに入ったときのきつねは、本当に面白くて手がつけられない。
「コンビのどっちがファン多いか問題」というのは、いわば普遍的な設問なのだが、それがこの二人だとより面白くなるのはなぜだろう?
ワードセンスとか怒るポイントとかタイミングとか、もちろんいろんな要素がありそうな気はするが、ルックスのレベルやキャラクターの奇矯さがちょうど拮抗しているように見える、というのも結構あるかもしれない。こんなディスりあいを聴いてそう思うのも妙かもしれないが、改めていいコンビだと思う。
いいコンビといえば、思いがけず恋愛話に興じている『ニッポン放送圧縮計画』におけるトム・ブラウンの関係性もいい。
そこにはもちろん部活の先輩後輩という関係がベースにあるのだが、まさかあの変態的ルックスを持つみちおのピュアな恋愛模様を、布川とリスナー全員で見守ることになるとは思わなかった。
いまここが一番熱い「恋愛リアリティーショー」の現場かもしれない。
寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年11月4日(木)号~ベラバイ狂気報告会~
【聴いた番組】
『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
『アッパレやってまーす!(火曜日)』(MBSラジオ)
『アッパレやってまーす!(水曜日)』(MBSラジオ)
『蛙亭のトノサマラジオ』(ニッポン放送 Podcast Station)
『Creepy NutsのANN0』は、『チョコナナ』でのアルピー酒井の結婚報告を聴いたリスナーの報告を又聴きでさらに受けて、頭おかしいだのクレイジーだのと二人で騒ぎたてる様子が面白い。あいだにリスナーという存在が挟まっているからこそ、その面白さはねじれながら増大していたように思う。
おかげで、妙なライブ感というかドライブ感があるというか。たしかにクリーピーの二人や佐久間Pの話しぶりを聴いていると、アルピー酒井は結婚報告の向こう側へたどり着いた初めての人類であるような気がしてくる。もはや前人未踏の領域へ。そこはきっと、非リア充が足を踏み入れた途端に窒息してしまう星。
『アッパレ』火曜日は主にアインシュタイン目当てで聴いているが、今週はくっきーを中心とする海外旅行話が興味深かった。
くっきーは芸人でありながらいまやアーティストとしての評価もあるため、海外でもほかの芸人からは聴けないような珍しい体験をしている。
わりと一般的な話題でも面白くしてしまうのがアインシュタインの凄味だと個人的には思っているのだが、今回は特にその感覚を全体で共有できている感じが伝わってきて、だんだんとこの火曜日のフォーメーションが仕上がってきているような気がした。
寝耳に日刊ラジオレビュー 2021年11月3日(水)号~「ただ話を聴く」ことの難しさと意義~
【聴いた番組】
『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』 #24 元受刑者飯〈後編〉
『#むかいの喋り方』(CBCラジオ)
『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送) 11月1日放送回
『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)
『24時のハコ』(TBSラジオ) ストレッチーズ
『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』はシーズン1の最終回。作り手は大変だと思うが、これはぜひ続けて言ってもらいたい良質な番組だ。このシーズン1を通じて、本音と向きあう音声メディアとの相性も抜群だということも証明された。
元受刑者が語る「居場所」という言葉が強く響く。「居場所がない」という感覚と、「自分の話を聴いてくれる人がいない」という状況。その二つが人間にとっていかに大切かということを、それらに常に恵まれてきた人は、ほとんどわかっていないのかもしれない。この二つが合わさると、完璧な「孤独」が生まれてしまう。
そして犯罪を犯すと、その状況はさらに強まってゆく。特に印象的だったのは、取り調べも裁判も、向こう側の質問に対して答えることを求められるだけで、こちらから話すことを聴いてくれる人は誰もいないという話。
そもそも裁判官や弁護士は、基本的には整った教育環境を必要とする以上、恵まれてきた人間である可能性が高い。罪を犯した人間の孤独に寄り添う感性を、そしてそのことの必要性を、本当に感じている人がどれだけいるだろうか。
彼は「解決策を提示してくれ」と言っているのではなく、ただ「話を聴いてほしい」と言っている。それくらい誰にでもできることのようにも思えるが、偏見のないフラットな姿勢でそれをできる人間が、いかに少ないことか。
この番組はまさにそんなフラットなスタンスを信念として持っているように思えて、シーズンの締めくくりにその核の部分を改めて感じることができた。続編を強く望む。