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2025年夏ドラマ(7月スタート)ベスト5、そしてひとり感想戦

毎度「傾向と対策」を書いておきながら、それに対する「解答」がないのもあれだなと急に思ったので、今回は実際に観てみて良かった作品ベスト5を挙げつつ、感想を書いていきたいと思う。

まあ「解答」と言ったって、いわゆる「個人の感想」なわけですが。自分の中で立てた予想に対する「回答」というほうが近いかもしれない。

スタート時の紹介記事に比べるとそういう振り返り&トータルな感想記事は少ないような気がするので、とりあえず自分で書いてみようと思った次第。

X(旧Twitter)なんかでも各ドラマに関するつぶやきは見られるものの、「今期どれが一番良かったか」みたいな比較込みの感想にはたどり着きづらかったりする。

これはドラマの題名で検索している限り総体的(かつ相対的)な感想は永遠に見つけられないという、検索至上主義の罠というか穴みたいなところもあると思うが、いずれにしろ書いておかないと自分でもこの時期どのドラマが良かったと思ったのか結構忘れてしまいがちなので、ここに書き留めてみようと思う。

↓ちなみに今期ドラマの「傾向と対策」記事はこちら。
radiotv.hatenablog.com


5位『しあわせな結婚』(テレビ朝日

当初の「傾向と対策」記事ではイチ推しに選んだこの作品。阿部サダヲ×松たか子というキャスティングも鉄板で、間違いなく盛り上がるはずだったが、個人的には中盤以降思いのほか伸び悩んだ印象があった。

刑事がわざわざ再捜査をはじめた事件であるからには、殺人事件の真相にもっと大きな組織や外部の別の事件が関わってくるのかと思いきや、結局家族内で小さく収まってしまうあたりも意外性に乏しく、このスケールであれば半分の話数で間にあったのではないかと感じてしまった。

そして後半かなり時間に余裕があったわりには、刑事・黒川(杉野遥亮)がネルラ(松たか子)に抱いていた恋愛感情らしきものもうやむやなまま。この作品に特有の武器になるかと思われたこの二人の関係を、設定はしてみたもののあまり生かし切れていなかったような。

それでも前半のワクワク感を評価してこの位置に。


4位『能面検事』(テレビ東京

正直あまり期待してはいなかったし、タイトル通り主人公が無表情な「能面」であること以外に特徴があるかと言われれば困ってしまう。だがその徹底した「能面」っぷりがキャラクター同士の関係性から物語の展開に至るまで、これほど随所に効いてくるとは思わなかった。

正統的な物語と特異なキャラクターのバランスが思いのほか良く、主人公の無表情こそが視聴者の感情を揺さぶるという逆説的な狙いも、見事にはまっていたように思う。


3位『19番目のカルテ』(TBS)

すっかり飽和状態に見える医療ドラマがそれぞれ専門性を高めて細分化しているこのタイミングで、あえて「総合診療医」という幅広い、でありながらこれからの領域を持ってきたことが功を奏した。

そのおかげで、作品にハクをつける目的で並べたてられる専門用語が頻出することもなく、場面に応じて視聴者の心に届く言葉が丁寧に紡がれていたように思う。

飽和状態にあるジャンルだからといって、むやみにニッチな隙間を狙えば良いというわけではないことを証明する好例。


2位『愛の、がっこう。』(フジテレビ)

当初は「ホスト×教師」という職業設定の距離感がリアリティの面で足枷になるのではと危惧していたが、そのあいだに入る各キャラクターが絶妙な緩衝材となって、回を追うごとに共感度が高まっていった。

特にヒロインを時には突き放しつつも裏から支え続けた親友役の田中みな美、そして当初は明らかに嫌なエリートでありながらも、負けを認めることで徐々にいい奴へと変貌していく中島歩の役が秀逸で、そのほかにもホストクラブ社長の沢村一樹、ヒロインの父親役の酒向芳、ホストの弟分役の坂口涼太郎など、それぞれの役柄の複雑な心情を表す動きが作品のリアリティを支え、たしかなものへと作り上げていった印象。

恋愛ドラマという以上に、人間ドラマとして見ごたえがあった。


1位『僕達はまだその星の校則を知らない』(関西テレビ・フジテレビ)

初回を観た時点では、せっかくの「スクールロイヤー」(学校弁護士)という設定があまり生かされているようには見えず、普通の学園教師モノという感触で少し期待はずれ感があった。

しかし二話目からはその学校の内側でも外側でもない中立的な、しかしながら学校と学生どちらの味方でもある独自のポジショニングが如実に機能しはじめ、それが誰にでも寄り添うことのできる主人公の優しすぎる性格ともあいまって、学校に潜むあらゆる問題に別角度から繊細で温かみのある光を照らし続けていたように思う。

これほど内気な磯村勇斗は初めて観たが見事にはまっており、そこに寄り添う珠々(堀田真由)とのやきもきさせる純愛も見どころのひとつになっていた。

さらには学生たちの演技も素晴らしく、学校という感情渦巻く風景を、かつてないほど精緻かつ丁寧に描き出した作品になっていたと思う。