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『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』最終回直前イチオシドラマレビュー

これまで女性誌が女性目線から女性に向けて伝授してきた数々の婚活ノウハウを、徹底した男性目線から鮮やかに覆してみせるという、目からウロコな「角度」を持った力作。

アラフォー女性の恋愛模様を情け容赦なく描きつつも、すべてを徹底してエンターテインメントに昇華/変換/回収してやろうという、作り手の気概と茶目っ気を随所に感じさせる演出に引き込まれる。特に藤木直人中谷美紀による丁々発止のやりとりには、かの名作『男女七7人夏物語/秋物語』における明石家さんま大竹しのぶが発していた類の、絶妙な呼吸とビート感がある。

今や多くのドラマが、シリアスな物語内にコメディ要素を巧みに組み入れることに四苦八苦しているが、ここまでコメディとシリアスが自然に溶けあっているドラマは、なかなかあるものではない。昨今多く見受けられるタイプの、あとのせサクサク感のある取ってつけたようなコメディではなく、しっかりとダシの効いたコメディが物語の根底に宿っている。

正直、プレーンなイケメンとのイメージが強かった藤木直人に、ここまでアクの強いコメディは期待していなかったので、その点は嬉しい誤算というか、勝手に「発見」した気分になっている。すでに各所ですっかり発見されていたのかもしれないが。

加えて、期待通りのモテ男を演じるチュートリアル徳井義実の、照れを多分に含んだ演技も相変わらず素晴らしい。その繊細なリアクションには、もしかすると本業俳優ではなく、本業芸人の役者にしか出せないニュアンスというものがあるのではないか、と改めて考えさせられる。

長尺なタイトルも含め、ややトリッキーなドラマと思われている節もあるのかもしれないが、コメディを入口としてシリアスをも描き尽くす、非常に充実した内容・展開を持った良質なドラマである。同じくコメディとシリアスを見事に融合させている日テレのクドカン脚本ドラマ『ゆとりですがなにか』とともに、今季もっとも楽しませてくれた作品が、いよいよ最終回を迎える。