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ラジオ2014年春の改編注目番組 聴取率のお話を添えて

タイトルの気まぐれフレンチ感は真の気まぐれに過ぎずシェフにあらず。本題へ。

ラジオ春の改編の一番大きなものといえば、毎年結局のところ「ナイター中継開始」ってことになってしまい、大幅な枠を野球中継に奪われながらもその隙間で細々と冒険実験する、というのがお馴染みの展開。しかし今年は、秋に比べれば毎度地味なこの改編期にも、ラジオ各局のスタンスの違いが垣間見えて面白い。

といってもこの段階できっちり新番組の特集ページを組んでいるのはやはり民放AM主要局くらいで、まだ全貌が見えてこない局も多い。なのでここではTBSラジオニッポン放送文化放送、ラジオ日本の番組を取り上げることになる。

特に結論を後回しにする必要もないので先にまとめてしまえば、ニッポン放送のドラスティックな改編っぷりと、それとは対照的にミニマムなTBSラジオの改編、という対比が最大の注目ポイントである。

ちなみに今回の改編の状況は、聴取率の現状と比較しながら考えてみると非常にわかりやすい。

TBSラジオ公式HPの発表によれば、2014年2月度の聴取率は以下のようになっている。

http://www.tbs.co.jp/radio/topics/201403/001814031400.html

どう見てもTBSの圧勝である。相変わらずだが、おそらくはラジオ聴取者の平均年齢が恐ろしいことになっている。

そしてさらに注目すべきは、以下の文言。

TBSラジオは1.3%を獲得し、首位。

2位はJ-WAVEで0.8%。3位は文化放送ニッポン放送TOKYO FMが同率で0.7%

6位はNHK第一で0.6%でした。》

正直比較する数値が小さすぎるため差が明確に表れにくく、それゆえ3局が同率3位などという大雑把な事態が発生してしまうのだが、とりあえずTBSが断トツであること、そして2位は当然の如くニッポン放送だろうと思いきや、僅差ではあるがJ-WAVEに負け、さらには文化放送TOKYO FMにも追いつかれているということがわかる。

とはいえやはり数値の信憑性はそこそこ怪しく、0.1%の差は正直誤差の範囲と見なすべきかもしれない。実際過去の数値を見る限り、2位以下は常に0.1%単位で順位が頻繁に変動しており、結局のところ「TBSのひとり勝ち」とだけ把握しておけばいいのかもしれない。

そんな中、最も注目すべきは、巻き返しをはかるニッポン放送の思い切ったリニューアルだろう。

特に『オールナイトニッポン0』はまたしても総入れ替え。ここはもうはっきりと「育成枠」という認識で良いだろう。ここで評価を得た者が1部へと昇格する。そういうフラットな評価を得られる場は、少なからず演者のモチベーションを高めるはず。

ただ、去年昇格した久保・能町が1年で終了してしまったというのがちょっと気がかりで、昇格してすぐに終了となると「昇格=モチベーション」とはあまりならないかもしれない。むしろいったん番組が終了してしまうとそこで評価が決定してしまい、同じ局で再び番組をやるという道が遠のく印象が強い。

新ラインナップを見ると、いまだミュージシャン優勢ではあるのだが、芸人枠が1から2に増えたのは良い傾向だと思うし、その2組も他局に先駆けて起用した芸人であり、往年のニッポン放送らしさを感じさせる。

木曜のウーマンラッシュアワーについては、もちろん『THE MANZAI2013』優勝直後の最も旬な時期であり、過去の『ANN』単発放送を聴く限り、漫才の延長線上にある、というかもうほぼそのまま漫才になるのではと思わせる村本の縦横無尽なマシンガンフリートークは、ラジオの特性を存分に生かす形になるだろう。さらにはその一方で、実はツッコミの中川パラダイスの方の、以外と「黒い過去(元カラーギャング)」もすでに顔を出しており、テレビとは違った意外性も注目ポイントのひとつ。かつて『JUNK 雨上がり決死隊のべしゃりブリンッ!』で、大人しいと思われていた蛍原の超絶クレイジーっぷりが密かに炸裂していたように、時に「じゃない方芸人」の思わぬポテンシャルが引き出されることがあるのも、ラジオの大きな魅力のひとつ。

そして金曜は、ようやく来たラブレターズ。2012年秋の『ANNお笑いオールスターウィーク』で初登場した彼らのチャレンジングなパーソナリティっぷりは本当に衝撃的で、当時『日刊サイゾー』のラジオコラムでこの『オールスターウィーク』全般について、特に千原ジュニアバカリズムなど錚々たる面子について書くつもりだったものが、その衝撃によりほとんどラブレターズの絶賛記事になってしまった。その後も長すぎるお試し期間が続き、5回の単発放送を経て待望のレギュラー化。ここで心機一転さらに攻めるか、あるいはこれまで積み上げてきたものを守るか、色々なやり方が考えられると思うが、やはり彼らには常に攻め続ける姿勢を期待したい。近年、若手芸人のラジオスターがなかなか出て来ないので、ここで一気に堰を切って欲しいという願いもある。

思いがけずニッポン放送の話が長くなった。正直それ以外の局にはあまり注目すべき点がない。以下、少し簡略に。

TBSラジオは、先に触れたごとく、見るからに最小限の改編。お笑い好きとしては『よしもと下克上』の後番組『デブッタンテ』が気になる。

個人的に今回の改編は、『エレ片』の後に続くこの枠に引き続きお笑いを持ってくるのか、あるいはそれ以外で来るのかで今後のTBSのスタンスが見えるのではないかと思っていたため、まずはお笑い番組が来てくれてホッとしたというのが正直なところ。本当は『ミュージックナビ』『ラジオ・パープル』の帯枠を丸ごと『JUNK2』化して欲しいのだが、やはりそこには手が入らず。ここは引き続き予算削減枠として割り切っているように見える。

文化放送は『ルネッサンスラジオ』でコアなファンを獲得してきた髭男爵山田ルイ53世が土曜昼に進出する『土曜の午後は♪ヒゲとノブコのWEEKEND JUKEBOX』でどのような顔を見せるのか。

ラジオ日本は、野球中継のない日に放送というわりには野球番組としか思えぬタイトルの『激闘!麻布台スタジアム』という番組が始まるようだが、各曜日ごとにテーマもパーソナリティもまったく異なり、火曜のテーマが「お笑い」、そしてその出演者に、電車ネタでお馴染みのななめ45°がいるところに少しだけ注目している。

と、各局のHPで新番組を順に見ていくと、やはりTBSラジオの守備的な姿勢がどうにも気になる。むしろニッポン放送が賭に出すぎているとも言えるのかもしれないが、TBSはラジオ業界のトップをひた走っているとはいえ、依然として業界全体の底上げが必要な状況には変わりなく、いまだ改善の道は見えてこない。

お笑い好き必聴の深夜帯『JUNK』勢は相変わらず好調とはいえ、『JUNK2/JUNK ZERO』終了以降は、若手芸人パーソナリティの登竜門が実質的に消滅。一方でニッポン放送が、『オールナイトニッポン』や『ナイタースペシャル』等でこまめに単発実験の場を若手芸人へと提供しているのに比べると、その点に関してはかなり消極的と言わざるを得ない実情である。

もちろん現在好調であるのなら、入れ替え戦は必要ないという考え方もある。だがそうしているうちにその下の年代が「空白の世代」になってしまい、「数年後には地道に育成を続けてきた他社にお株を奪われる」というパターンはどこの業界にも頻発している形ではある。あるいは自らが業界トップをキープし続けながらも、若手リスナーを味方につけることができず、そのパイが全体としてぐんぐん縮小していくという可能性も。

そういう意味でも、TBSラジオには「若手芸人育成枠」としての『JUNK2』枠復活を期待し続けているのだが、おそらくは予算的にここで冒険はしたくないという実情が読み取れる。

その一方でまた、「良い番組を終わらせない」というのもある種「改編」の一部であるわけで、習慣性への依存度が高いラジオというメディアに対しては、多くのリスナーが現状維持を望んでいるという見方も、もちろん理解はできる。

しかし放送局の積極的な姿勢というのは、出演者のモチベーションをも自動的に高めるもので、そういうラジオ界全体を底上げするような、テンションの高まりを感じさせる改編を今後ますます期待したい。という、そんな期待の自由。

ニッポン放送 2014年春の新番組】

http://www.1242.com/info/2014spring/

TBSラジオ 2014春の新番組】

http://www.tbs.co.jp/radio/2014in/

文化放送 「再発見」2014年文化放送春の新番組】

http://www.joqr.co.jp/new1404/

【ラジオ日本 2014春の番組改編】

http://www.jorf.co.jp/TOPICS/top/2014kaihen.php